評論文対策問題 090(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「書くこと」は、何のためにあるのだろう。
誰かに伝えるため? 自分の考えを整理するため?
たしかに書くことには、記録や伝達という役割がある。
しかしそれだけではない。
書こうとすると、まず「自分が何を思っているのか」に気づかされる。
書きながら、初めて「そうか、自分はこう感じていたのか」とわかることがある。
書くことは、単なる言葉の出力ではなく、「思考の現場」そのものなのだ。
また、言葉として形にすることで、漠然とした不安や混乱が輪郭を持ちはじめる。
書くことで気持ちが落ち着いたり、物事のつながりが見えてきたりするのは、内面のざわめきが「読める形」になるからかもしれない。
さらに、書かれたものをあとから読み返すことで、過去の自分と対話することもできる。
書くこととは、未来の自分へ向けて「ここに私はいた」という痕跡を残す行為でもあるのだ。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 書くことは、他人に正確に伝えるためだけの行為である。
- 書くことで、不安や混乱はさらに強くなる。
- 自分の考えは、書く前に完全に整理されているべきである。
- 書くことには、未来の他者に読まれることが前提である。
- 書くことは、感情を排除して論理的に構築すべきである。
- 書くことは、自分の思考や感情に気づき、形にしていく行為である。
- 書くより話す方が、自分を理解するのに適している。
- 書くことは、即興性が求められる創作行為に限られる。
- 自分の内面は、書いたところで理解できるようにはならない。
- 書くことは、過去の自分を否定するための手段である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 記録や伝達以上の意味が論じられている。
- 選択肢2:× 不安や混乱が「輪郭を持ち始める」とされている。
- 選択肢3:× 書きながら考えが深まることが主張される。
- 選択肢4:× 他者ではなく「未来の自分」との対話も想定されている。
- 選択肢5:× 感情の気づきも重要な要素とされている。
- 選択肢6:◎ 「思考の現場」「気づき」「痕跡を残す」=本文の核心。
- 選択肢7:× 話すことには触れられず、「書くこと」の意義が中心。
- 選択肢8:× 創作以外にも日常的な意味づけが語られている。
- 選択肢9:× 書くことで理解が深まるとされている。
- 選択肢10:× 否定するのではなく、「対話」や「痕跡」として肯定される。
語句説明:
輪郭:物事の境界・はっきりした形。ここでは曖昧だった感情が明確になること。
【本文の英訳】
Why do we write? Not just to record—but to discover. Writing shows us what we feel, what we fear, what we didn’t yet know we thought. Each word gives shape to the formless. To write is to leave a trail of who we are, and who we were becoming.