評論文対策問題 054(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
人は誰しも、過去を持っている。
成功も失敗も、嬉しかったことも苦しかったことも、記憶の中で何度も思い返される。
ときにそれは支えとなり、ときに足かせとなる。
過去は「変えられないもの」として受けとめられるが、実は「意味づけ」によってその影響は変化する。
たとえば、ある失敗を「自分には向いていなかった証拠」として記憶すれば、それは行動の抑制になるが、「貴重な経験だった」ととらえ直せば、前向きな力にもなる。
このように、出来事そのものよりも、それに対してどのような視点や解釈を持つかが重要である。
過去は事実として固定されているが、その“意味”はつねに現在から再構成される。
問題は、過去に引きずられすぎると、現在の可能性を閉ざしてしまうことだ。
何度も後悔し、「なぜあのとき」と自分を責め続けるうちに、今ここで選べること、始められることが見えなくなる。
過去は「戻れないもの」ではあるが、「現在の自分が意味を与え直せるもの」でもある。
私たちが過去に支配されるのではなく、過去を自らの語り直しによって“現在の力”に変えていけるとすれば、記憶とは単なる履歴ではなく、「未来と向き合うための素材」となり得るのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 過去の事実は変えられないため、常に現在に悪影響を与える。
- 過去の過ちを繰り返さないためには、忘れずに反省し続けるべきである。
- 人間は過去に縛られてこそ、慎重に生きることができる。
- 過去を悔やみ続けることで、自己成長が促される。
- 過去の出来事は、そのままの意味で現在に影響するものである。
- 過去に対する解釈の仕方が、現在や未来の生き方に影響を与える。
- 過去の記憶は常に変化しないものであるため、向き合う意味はない。
- 人は過去を直視せず、未来に集中することがもっとも建設的である。
- 過去の失敗は、自分の本質を示す動かしがたい証拠である。
- 過去の出来事を語り直すことは、現実逃避であり危険である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 過去は変えられないが、意味は変えられると本文で述べられている。
- 選択肢2:× 「反省し続ける」ことが可能性を閉ざす危険が示されている。
- 選択肢3:× 過去に縛られることが「今の可能性を見えなくする」と批判的に述べられている。
- 選択肢4:× 悔やみ続けることの負の側面が強調されている。
- 選択肢5:× 「出来事よりも意味づけのほうが影響する」が筆者の主張。
- 選択肢6:◎ 「再構成」「語り直す」「意味を与え直す」など本文の中心的主張と一致。
- 選択肢7:× 記憶の意味は変化する=向き合う意味がある。
- 選択肢8:× 「過去は素材」とされており、回避ではなく活用が鍵。
- 選択肢9:× 失敗が自分の本質を決めるわけではないとされる。
- 選択肢10:× 「語り直す」ことは「現在の力」に変える行為とされる。
語句説明:
再構成:一度できあがったものを、別の視点や目的で新たに組み立て直すこと。
【本文の英訳】
Everyone carries their past. Whether joyful or painful, past memories shape how we view the present. While we cannot change what happened, we can reinterpret what it means. A failure can be seen as proof of our limits—or as a valuable experience. Meaning is not fixed by the past itself, but by how we relate to it now. Dwelling on regret may blind us to present opportunities. But if we retell our past from today's perspective, it can become a resource for the future. Our memories are not just records; they are material for living forward.