評論文対策問題 053(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
私たちは日常生活のあらゆる場面で「便利さ」に囲まれている。
スマートフォンを取り出せば、目的地までのルートが即座に示され、オンラインショップでは指先ひとつで買い物が完了する。
情報も、記憶も、決断も、テクノロジーによって代替され、かつて必要だった努力や工夫の多くが不要になった。
だが、その便利さの裏で、私たちは気づかぬうちにある「力」を失ってはいないだろうか。
地図を読まなくてもよくなった結果、自分の位置関係を把握する能力が衰え、検索すれば済むからと記憶しなくなり、「考えなくても済む」状態に慣れてしまう。
便利さは、負担を減らすと同時に「問い直す力」「疑う力」「選び取る力」といった、判断のための基本的な能力を奪う方向にも作用する。
特に「おすすめ機能」や「自動選択」のような仕組みは、一見すると親切だが、そこに委ねるほど、私たちは「選ぶ」という行為そのものから遠ざかっていく。
結果として、「自分で選ぶのが面倒」「考えなくても正解が出る」という感覚が常態化し、自律的な判断ができなくなる可能性すらある。
もちろん、テクノロジーの恩恵を否定するわけではない。
だが、便利であることと主体的であることは両立しうるはずであり、便利さに頼るほど、「自分で決める」という行為の重みを意識的に取り戻すことが必要ではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 便利であることは、選択や判断の負担を完全に取り除いてくれる。
- テクノロジーの発展は、人間の知性に代わる存在として歓迎される。
- 利便性が高いほど、人間の主体性はより強く保たれる。
- 自動化された提案は、選択の自由を拡張することに貢献する。
- 便利な道具に頼ることは、人間の可能性を広げることに等しい。
- 便利さが進むほど、自ら問い、選ぶ力は意識しなければ衰えていく。
- 人間の判断力は自然と維持されるため、便利さは問題にならない。
- テクノロジーの使用には一切の警戒をもつべきである。
- 便利さによって「正解」に早く到達できるのは、教育的に望ましい。
- 便利さの恩恵を受けない選択が、本来の人間らしさである。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 「負担軽減」は認められているが、「完全に取り除く」とはされていない。
- 選択肢2:× 人間の判断力が失われる危険性が論じられている。
- 選択肢3:× 便利さにより「選ばない・考えない」傾向が生まれるとされている。
- 選択肢4:× 選択の自由が「奪われる」可能性に焦点がある。
- 選択肢5:× テクノロジーの利点は認めつつも、「広げることに等しい」とまでは述べられていない。
- 選択肢6:◎ 本文「判断力を奪う」「選ぶ行為から遠ざかる」「意識的に取り戻す」などに合致。
- 選択肢7:× 放置すれば失われるというのが筆者の見方。
- 選択肢8:× 全否定ではなく、「恩恵は認めつつ警戒を」とされている。
- 選択肢9:× 正解に早く到達することよりも、「問い・判断」の力が重視されている。
- 選択肢10:× 利便性を一切否定しておらず、「両立」が可能とされている。
語句説明:
自律的:他からの命令や制約によらず、自らの判断や意思によって行動すること。
【本文の英訳】
We are surrounded by convenience in every aspect of daily life. With smartphones and automated tools, we no longer need to remember, decide, or even think deeply in many situations. While this convenience reduces burdens, it may also weaken our ability to question, doubt, and choose. Especially with features like "recommendations" and "auto-suggestions," we may grow detached from the act of choosing itself. This can lead to passive decision-making and the loss of independent thought. Though technology offers clear benefits, we must remain conscious of our responsibility to choose—and not let convenience choose for us.