評論文対策問題 052(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「自分らしくあれ」「自由に表現しよう」といった言葉が肯定的に語られる時代において、自己表現は重要な価値として広く受け入れられている。
特にSNSや動画配信など、個人が情報を発信する手段が整った現代では、「自分を表現すること」が自己実現の手段として強調されている。
だがその一方で、他者の評価を前提とした表現が、いつの間にか「見せるための自己」を生み出し、本来の自分との乖離を招くこともある。
たとえば、「いいね」やフォロワー数を基準に自己を評価し、他人の期待に応えるような投稿を繰り返すうちに、「見せるための自分」が肥大化していく。
それは「本当の自分」を見失わせるだけでなく、「他人にどう見られているか」という視点を常に意識する不安定な自我を生む。
自己表現とは本来、「内面を外に開く」営みであるはずだが、現代のように他者の反応が数値化される環境では、それが「外側を整える」営みへと変質しやすい。
自分らしくあるための表現が、いつしか「他人にどう映るか」にすり替わり、表現そのものが自己監視や自己演出に変わってしまうのだ。
このような状況では、「表現しないこと」「沈黙を選ぶこと」さえも、時に誤解や否定の対象となる。
自己表現の時代においてこそ、「なぜ表現するのか」「それは誰のためなのか」という根源的な問いが必要なのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 自己表現は自由である以上、他者の評価を気にすべきではない。
- 現代において、自己表現は社会的成功の前提条件である。
- 「見せるための自己」は、人間関係の安定をもたらす。
- 自己表現は自己実現の方法であり、常に肯定されるべきである。
- 自己表現の評価軸は、他人の反応に委ねるのが最も客観的である。
- 他人の目を気にせず、沈黙することが最善の生き方である。
- 自己表現には、他人に見せることを前提とするリスクが伴う。
- 「見せること」を意識する表現こそが、真の自分を作る。
- 表現しないことを選ぶ人は、社会的な責任を放棄している。
- 評価を求めることで、自己表現はより純粋になる。
【正解と解説】
正解:7
- 選択肢1:× 「気にすべきではない」よりも、「気にせざるを得ない環境」が問題視されている。
- 選択肢2:× 社会的成功のための自己表現という視点は本文にない。
- 選択肢3:× 「見せるための自己」は、むしろ不安定な自我を生むとされている。
- 選択肢4:× 自己表現の危うさへの警鐘が中心テーマ。
- 選択肢5:× 数値化された評価が「本来の自分」との乖離を生むとされている。
- 選択肢6:× 沈黙の肯定も一部含まれるが、極端に推奨されてはいない。
- 選択肢7:◎ 「他人の期待に応えるうちに〜肥大化していく」など本文主張と一致。
- 選択肢8:× 「見せること」中心の表現はむしろ自己喪失の原因とされる。
- 選択肢9:× 表現しないことの意味も論じられており、否定的ではない。
- 選択肢10:× 評価への依存が表現の変質を招くとされる。
語句説明:
乖離:本来あるべきものが、著しく離れてしまっている状態。
【本文の英訳】
In today’s world, “Be yourself” and “Express yourself” are widely encouraged. With platforms like social media, self-expression is seen as a key to self-fulfillment. But when expression is guided by how others might react, it can create a “performative self” that grows distant from our real identity. Chasing likes and approval may lead to anxiety and a shaky sense of self. Expression becomes less about revealing what’s inside, and more about adjusting the outside. This shift turns self-expression into self-monitoring. Even choosing not to express can be misunderstood or rejected. So in this age of expression, we must ask: Why do we express? And for whom?