評論文対策問題 086(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「誰かのために」という言葉は、どこか美しく聞こえる。
誰かの役に立ちたい、力になりたいという思いは、人間関係を築く上で大切な感情の一つだ。
しかし、その思いが強くなりすぎたとき、自分を削ってまで他人に尽くしてしまうことがある。
「自分のことは後でいい」「相手が喜ぶならそれでいい」
そんなふうに思って動いているうちに、気づけば疲れきってしまう人もいる。
それでも、「自分が頑張らなきゃ」と思い詰めてしまうのは、他者を思う気持ちゆえに、自分の限界を見失ってしまっているからかもしれない。
本当に「誰かのため」を思うなら、自分の気力や余裕を保つこともまた、その人に対する誠実さではないだろうか。
「自分を大切にすること」は、決して自己中心的な行為ではない。
むしろ、それがあって初めて、持続可能な関係や支え合いが可能になる。
誰かのために動くときほど、「どこまでが自分の役割か」「何を背負わなくてよいのか」を問い直す視点が必要なのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 誰かのために尽くすことは、常に正しく美しい行為である。
- 自分を犠牲にしてこそ、他人の信頼を得ることができる。
- 相手の期待にはできる限り応え、限界は考慮しない方がよい。
- 本当の優しさとは、何も見返りを求めずに尽くすことである。
- 自分を大切にすることは、他人との関係を築くうえでの出発点である。
- 相手に尽くすには、まず自分の考えを捨てることが求められる。
- 疲れていても、相手のためなら行動すべきである。
- 他人のために動くとき、自分の感情は二の次にすべきである。
- 人間関係は、無理をしないと維持できないものである。
- 自分の役割は、できる限り広く引き受けるべきである。
【正解と解説】
正解:5
- 選択肢1:× 一見美しいが、自分を削るリスクがあると警鐘が鳴らされている。
- 選択肢2:× 自己犠牲は持続性がなく、疲弊につながるとされている。
- 選択肢3:× 限界を見失うことの危険が述べられている。
- 選択肢4:× 見返りの有無ではなく「持続可能性」がキーワード。
- 選択肢5:◎ 「自分を大切にすること」が他者への誠実さとされる。
- 選択肢6:× 考えを捨てるのではなく、視点のバランスが必要。
- 選択肢7:× 疲労は見逃すべきではないとされる。
- 選択肢8:× 自分の感情の軽視は否定されている。
- 選択肢9:× 無理を前提とせず、役割の線引きが重要とされている。
- 選択肢10:× 背負いすぎず「どこまで担うか」を考える視点が必要とされる。
語句説明:
すり減らす:体力や気力を消耗し、自分を弱らせてしまうこと。
【本文の英訳】
Doing something “for others” sounds noble. But giving too much can leave you empty. Caring for yourself isn’t selfish—it’s how you stay present. Real kindness includes knowing your limits. To help someone, you must first stand on your own feet.