評論文対策問題 084(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「変わりたい」「変えたい」という言葉は、前向きな響きを持っている。
状況に抗い、よりよい方向へ進もうとする意志は確かに力強い。
しかし一方で、「今のままでいい」「これもひとつの在り方だ」と受け入れることは、どこか消極的で、あきらめに近いものと見なされやすい。
だが、受け入れることは、本当に「何もしない」ことなのだろうか。
ときに、自分にどうしようもない現実や、相手の気持ちをただ受けとめることが、最も勇気のいる行為である。
無理に変えようとすることでこじれてしまう関係もあるし、変えられないものに対して怒りや焦りをぶつけても、自分が疲弊するだけのこともある。
「これはこれでよい」と認めることは、現状を肯定することではなく、そこで立ち止まって目を凝らし、見えなかったものを見つける行為なのではないか。
それは、状況に流されることとは違い、意識的にとどまり、向き合おうとする選択である。
「変える」ことが力であるなら、「受け入れる」ことは知恵かもしれない。
両者は対立するものではなく、深くつながり合っているのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 受け入れることは諦めであり、変化を放棄する態度である。
- 変えられないものは、感情的に反発することで乗り越えるべきである。
- 現状を受け入れることは、思考停止の表れである。
- 「変える」と「受け入れる」は対立関係にある。
- 受け入れるという行為は、状況に屈することを意味する。
- 受け入れることは、見えなかったものに気づくための能動的な姿勢である。
- 変化を望むことができない人間に、受容はできない。
- 変化だけが人間の前進を支えている。
- 受容は感情を抑えるための技術にすぎない。
- 変えたいと思うよりも先に、すべてを拒絶することが誠実である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 諦めや放棄ではなく、「勇気」として肯定されている。
- 選択肢2:× 感情をぶつけることは「疲弊するだけ」と否定的に描かれる。
- 選択肢3:× 見えなかったものを見る「目の凝らし方」とされている。
- 選択肢4:× 両者は「つながり合っている」と明記される。
- 選択肢5:× 状況に流されるのではなく「向き合う姿勢」だと述べられる。
- 選択肢6:◎ 「見えなかったものに気づく」「意識的なとどまり」=本文主張と一致。
- 選択肢7:× 受容は「変化への知恵」として描かれている。
- 選択肢8:× 変化だけではなく、受容の価値も強調されている。
- 選択肢9:× 感情を抑えるためではなく、「意味を見出す態度」とされる。
- 選択肢10:× 拒絶ではなく、「向き合い、見つめる姿勢」が誠実とされる。
語句説明:
凝らす:集中してよく見ること。本文では「現実に注意深く向き合う」意味で使われている。
【本文の英訳】
We praise change. We chase better. But to accept is not to give up. Sometimes, it takes more strength to stay. Acceptance isn't silence—it's listening closely. Not running, but watching. That, too, is a way to move forward.