評論文対策問題 083(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
会話をしているとき、ふと「この人、本当は何を言いたいんだろう」と思うことがある。
言葉にはなっていないが、沈黙や目線、ため息や表情から、何かが伝わってくる。
人は、すべてを言葉にできるわけではない。
ときには、言葉にしてしまうことでかえって感情が薄れてしまうこともあるし、言葉にできないからこそ守られている気持ちもある。
「言葉にならない」という状態は、決して劣った表現ではない。
むしろ、そこにある「もどかしさ」や「ゆらぎ」こそが、その人の本音に近いのかもしれない。
無理に言語化することなく、ただ黙って寄り添うこと。
あるいは、その沈黙を「何も言わないこと」として片づけず、「何かを言おうとしていること」として受け取ること。
声にならない思いにも耳を傾けようとする態度が、人との関係を深める出発点になる。
大切なのは、「語られたこと」だけでなく、「語られなかったもの」にも敬意を払うことではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 言葉にできない思いは、伝える価値がない。
- 沈黙は、何も伝えていない証拠である。
- 感情は明確に表現されて初めて価値を持つ。
- 語られなかったことには、読み取るべき意味はない。
- 言葉にしない限り、他者との理解は進まない。
- 声にならない思いにも耳を傾けようとすることが、理解の出発点である。
- 本音とは、はっきりした言葉で言い切れるものである。
- 沈黙は相手を拒絶する意図の表れである。
- 伝えたいことは、言葉にして正確に伝えるのが一番である。
- 表情や雰囲気に頼ることは、誤解の元なので避けるべきである。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 言葉にできないことにも価値があるとされている。
- 選択肢2:× 沈黙もまた「伝えているもの」とされている。
- 選択肢3:× 感情の表現は必ずしも明確である必要はないとされる。
- 選択肢4:× 「語られなかったもの」にも敬意を払うべきと述べられる。
- 選択肢5:× 理解は言葉以外からも始まるとされている。
- 選択肢6:◎ 「耳を傾けようとする姿勢」=本文の中心的主張。
- 選択肢7:× 本音は「もどかしさ」や「ゆらぎ」にも宿るとされている。
- 選択肢8:× 沈黙は必ずしも拒絶ではなく、伝える努力でもあると解釈されている。
- 選択肢9:× 正確さより「受け取る姿勢」が重視される。
- 選択肢10:× 表情や沈黙から読み取ろうとすることが肯定されている。
語句説明:
もどかしさ:うまくいかず、思いが伝わらないことへの焦りや歯がゆさ。
【本文の英訳】
Not everything can be said. A sigh, a glance, a pause—these speak, too. What’s unspoken isn’t empty. Sometimes, silence holds the truest part of someone. Listening beyond words is where real understanding begins.