評論文対策問題 077(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「忘れないこと」が美徳として語られる場面は多い。
歴史、友情、感謝、教訓──どれも「忘れてはならない」とされる対象だ。
しかし、その一方で、人はなぜ「忘れる」ようにできているのだろう。
辛い経験や恥ずかしい記憶を抱えたまま生き続けるのは、簡単なことではない。
忘れることで初めて、私たちは前に進んだり、日常を取り戻したりできることがある。
それは「逃避」ではなく、「再生」や「変化」の始まりかもしれない。
忘れることは、記憶の放棄ではなく、感情や意味の再構成とも言える。
また、人との関係においても、すべてを記憶していたら、ぎくしゃくしてしまうことがある。
「あのときはごめんね」と言えるのも、「忘れること」の柔らかさがあるからだ。
忘れることを「悪」と決めつけず、それが生み出す余白ややり直しの可能性に目を向けること。
そこに、人間の柔軟さや希望があるのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 忘れることは怠慢であり、記憶を保つ努力こそが重要である。
- 記憶は正確でなければ意味がなく、曖昧さは許されない。
- 過去を忘れることは、同じ失敗を繰り返す危険性を高める。
- 人は忘れることで、自分に都合の良い世界しか見なくなる。
- 忘れることは、再生や変化を可能にする人間の能力である。
- 感情の整理には、記憶を細部まで思い出すことが必要である。
- 忘れるという行為は、対人関係において誠実さを欠く。
- 記憶は常に保持されるべきであり、忘却は人間の弱さである。
- 人間関係では、すべてを覚えていることで信頼が生まれる。
- 忘れることで、過去の反省をないがしろにしてしまう。
【正解と解説】
正解:5
- 選択肢1:× 忘れることも人間に必要とされている。
- 選択肢2:× 記憶の再構成や曖昧さに肯定的な視点が示されている。
- 選択肢3:× 忘却による成長や回復の可能性が述べられている。
- 選択肢4:× 忘れることで希望や柔軟さが生まれるとされている。
- 選択肢5:◎ 「再生・変化・柔軟性」=本文の中心的主張。
- 選択肢6:× 感情の整理に必要なのは「再構成」「手放し」であり、詳細の保持ではない。
- 選択肢7:× 忘却は誠実さと矛盾せず、むしろ関係の柔らかさを生むとされる。
- 選択肢8:× 忘却=弱さとはされていない。
- 選択肢9:× すべてを覚えていると関係がぎくしゃくするという懸念が述べられる。
- 選択肢10:× 忘れることは反省を否定するものではなく、「やり直し」の可能性がある。
語句説明:
余白:何も書かれていない空間。ここでは可能性や余裕の象徴。
【本文の英訳】
“Don’t forget.” We hear that often. But forgetting isn’t always failure. Sometimes, it’s how we heal. Letting go doesn’t mean giving up—it means making space to begin again. In memory’s soft edges, we find grace. Forgetting can be a form of hope.