評論文対策問題 076(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「もっと素直になった方がいいよ」
そう言われたとき、私たちは「相手の言うことを聞くこと」や「自分の意見を抑えること」を素直さだと受け取ってしまうことがある。
しかし本来、素直であるとは「感情や思考に嘘をつかずにいること」なのではないだろうか。
自分の考えや気持ちに正直であることと、他人の言葉に従順であることは、似ているようで全く異なる。
むしろ、相手の期待に応えようとばかりしていると、自分の中にある違和感や反発を押し殺すことになり、それが続くとやがて自分が何を感じているのかも分からなくなってしまう。
本当に素直であるとは、「嫌だ」と思った自分の感情を否定せず、でもそれをどう伝えるかに誠実であることなのかもしれない。
「素直=従順」ではなく、「素直=自分の内面にまっすぐであること」。
それがあって初めて、相手との対話も真に意味のあるものになるのではないか。
自分の声を聞くことと、相手の声に耳を傾けることは両立できる。
そのバランスの中に、本当の素直さはあるのだと思う。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 素直さとは、常に他人の意見を受け入れることである。
- 素直になるには、まず自分の感情を抑える必要がある。
- 素直であることと、他人に従順であることは同義である。
- 素直さは、自分の内面に逆らわず、誠実に伝えることである。
- 相手の期待に応えられない人は、素直とはいえない。
- 自分の本音を口にすることは、素直さではなくわがままである。
- 素直であるためには、対話よりも沈黙を重視すべきである。
- 素直さを保つには、他人の感情より自分を最優先すべきである。
- 素直であることは、衝突を避けるために自分を隠すことだ。
- 自分の感情に従うことは、対話の妨げになる。
【正解と解説】
正解:4
- 選択肢1:× 「素直=従順」ではないと明言されている。
- 選択肢2:× 抑えることではなく、「正直であること」が主眼。
- 選択肢3:× 混同することの危険が本文で論じられている。
- 選択肢4:◎ 「自分に嘘をつかず、どう伝えるかに誠実である」=本文の要旨。
- 選択肢5:× 期待に応えることが素直さではないとされている。
- 選択肢6:× 本音は「にじませる」価値あるものとされる。
- 選択肢7:× 対話の意義が強調されている。
- 選択肢8:× 「両立できる」と筆者は述べている。
- 選択肢9:× 自分を隠すことは「本来の素直さ」とは逆方向。
- 選択肢10:× 感情に向き合い伝えることが「対話の出発点」とされている。
語句説明:
従順:逆らわずに従うこと。本文では「素直さ」と区別されている。
【本文の英訳】
“You should be more honest.” But being honest isn’t the same as being obedient. True honesty means listening to your feelings—and expressing them with care. We don’t need to silence ourselves to keep peace. Real honesty lives where our voice meets theirs. It’s not about choosing sides, but holding both with respect.