評論文対策問題 075(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「うまく説明できないんだけど、なんかモヤモヤする」
誰しもそんなふうに、自分の感情を正確に言葉にできない経験があるのではないだろうか。
喜びや悲しみ、怒りや不安といった感情は、私たちの内側に強く存在しているのに、それを他人に伝えようとした瞬間、急に言葉が足りなくなる。
しかも、言葉にすることで、かえって自分の感情が「固定されたもの」として相手に伝わってしまい、本来のニュアンスが失われることもある。
それでも私たちは、「どうしてそう思ったのか」「なぜそう感じたのか」を説明しようとする。
その試み自体が、感情を整理し、相手との理解をつなぐ可能性を持っているからだ。
「うまく言えないけれど、伝えたい」という不完全な言葉の積み重ねが、むしろ本音や本当の思いをにじませることもある。
感情を説明することは、ただ正確な翻訳を目指すことではない。
説明しようとする過程で、自分自身も「この気持ちは何だったのか」と改めて見つめ直すことができる。
感情の説明とは、理解されるための道具であると同時に、自分を理解しようとする営みでもあるのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 感情はうまく言えないものなので、他人に説明しようとするべきではない。
- 感情は黙っている方が、誤解されずに済む。
- 感情の説明は正確さが重要であり、曖昧な表現は避けるべきである。
- 言葉にすることで、本来の感情が完全に失われる。
- 感情を説明できない人は、自己理解が浅いとみなされる。
- 感情をうまく説明することで、自分の価値を証明できる。
- 感情の説明は、伝達の手段である以上に、自己理解の営みでもある。
- 感情の説明は他人に依存する行為であるため、慎むべきである。
- 感情は説明するものではなく、コントロールすべきものである。
- 感情の説明に失敗した場合は、沈黙を選ぶ方が望ましい。
【正解と解説】
正解:7
- 選択肢1:× 「説明しようとすること」の価値が中心テーマ。
- 選択肢2:× 誤解される可能性もあるが、それでも伝えようとする姿勢が大切とされている。
- 選択肢3:× 正確さよりも「にじみ出る思い」や「過程」が重視されている。
- 選択肢4:× 失われることもあるが、試み自体が重要とされている。
- 選択肢5:× 説明の上手さと自己理解の深さは直結しない。
- 選択肢6:× 価値証明のためではなく、理解と整理のためとされている。
- 選択肢7:◎ 「説明=伝達+自己理解の営み」→本文の明確な主張。
- 選択肢8:× 他人との理解をつなぐ営みであり、否定されていない。
- 選択肢9:× コントロールではなく、理解しようとする姿勢が重視される。
- 選択肢10:× 説明の失敗すら「本音のにじみ出る機会」として肯定されている。
語句説明:
にじむ:本来見えないものが自然と表れる様子。ここでは「本音が表れる」こと。
【本文の英訳】
“I can’t explain it, but I feel off.” We've all felt emotions we couldn’t put into words. But trying to explain them matters. It helps others understand—and helps us understand ourselves. Even unclear words can reveal truth. Explaining emotions is not just communication. It’s a journey of self-reflection.