評論文対策問題 071（本文1000字・選択肢10個＋英訳）
本文（抜粋）
「もっと早く」「もっと短く」「無駄なく」といった言葉が日常の中で頻繁に聞かれるようになった。
現代社会では、効率が高く評価され、時間をかけることや回り道をすることはしばしば「非効率」として避けられる。
もちろん、効率化によって私たちの生活が便利になったのは事実である。
しかし、「効率が良いこと＝常に良いこと」とされる価値観が広がりすぎると、かえって失われるものもある。
たとえば、人との雑談や、明確な目的のない散歩、あるいは「意味がない」と思われる遊びなどは、効率の観点からは不要とされがちだ。
だが、こうした「無駄」の中にこそ、人間らしさや予期せぬ発見、心のゆとりが潜んでいる。
効率ばかりを求めることで、「目的のない時間」を持つことが罪悪感につながったり、「常に生産的でなければならない」というプレッシャーに苦しんだりする人も少なくない。
また、教育や人間関係においても、すぐに結果が出ないものや、一見遠回りに見える過程が「価値がない」と見なされる傾向が強まっている。
だが、本当に重要なものほど、すぐには目に見えず、時間と手間を要するのではないか。
効率だけでは測れない価値、非効率の中にある豊かさを見つめ直すことが、いま必要とされているのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 効率を追求することは、あらゆる場面で最も重要な価値である。
- 無駄を省くことは、人間らしさを保つために不可欠である。
- 非効率な行動は、基本的に避けるべき生活習慣である。
- 目的のない時間は、精神的健康を損なう可能性がある。
- 回り道をすることで、かえって時間を浪費してしまう。
- 効率にとらわれすぎず、「無駄」に見える時間も大切にすべきである。
- 生産性を上げるためには、感情や遊びは切り捨てるべきである。
- 無意味な雑談は、社会的には不要な営みである。
- すぐに成果が出るものだけが、価値のある学びである。
- 効率重視の生活は、全体としてバランスが取れている。
【正解と解説】
正解：6
- 選択肢1：× 効率至上主義への懸念が主題である。
- 選択肢2：× 「無駄」に見えるものこそが人間らしさを支えているとされている。
- 選択肢3：× 非効率にも価値があると筆者は主張している。
- 選択肢4：× 精神的健康を損なうのは「目的がなければならない」という圧力である。
- 選択肢5：× 遠回りが「価値ある経験」になるとされている。
- 選択肢6：◎ 「非効率の中にある豊かさ」＝筆者の中心的主張。
- 選択肢7：× 感情や遊びの否定は本文の内容と真逆。
- 選択肢8：× 雑談は「人間らしさ」の象徴とされている。
- 選択肢9：× 成果がすぐに出ない学びにも価値があるとされている。
- 選択肢10：× バランスを失っていることへの警鐘が鳴らされている。
語句説明：
効率：時間や労力を無駄なく使って成果を得ること。本文ではそれに偏る危険を論じる。
【本文の英訳】
We often hear, “Be faster,” “Don't waste time.” Efficiency is praised, but what do we lose when we rush? Small talks, wandering walks, playful moments—these “inefficient” acts are rich in human value. When we chase constant productivity, we risk guilt, pressure, and burnout. True richness often hides in the slow, the roundabout, the seemingly useless. Let’s not forget to cherish what can't be measured in speed.