評論文対策問題 069(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「沈黙は金」という言葉がある一方で、現代では「声を上げること」が重要視される場面が多い。
SNSや議論の場において、「黙っていること」は「無関心」や「意見がない」と見なされがちだ。
しかし、沈黙は必ずしも「何もないこと」を意味しない。
話さないことで、むしろ何かを伝えていることもある。
たとえば、強い怒りや深い悲しみは、言葉にしようとするとかえって薄れてしまうことがある。
また、相手の話をただ聞き続ける「沈黙」は、集中や共感の証でもある。
沈黙は、「言葉にできないもの」を守るための手段にもなりうるのだ。
もちろん、全ての沈黙が肯定的とは限らない。
時にそれは、責任回避や対話の拒否として働くこともある。
だからこそ、沈黙が「語っている」ものに耳を傾ける感性が求められる。
沈黙を「空白」として埋めようとするのではなく、「意味のある余白」として受け取ること。
そこに、言葉では届かない領域での理解が始まるのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 沈黙は常に逃避の表れであり、積極的に話すことが重要である。
- 意見があるなら必ず言葉にして伝えるべきである。
- 沈黙は共感や思考を妨げる障害でしかない。
- 現代社会では、沈黙は誤解されるため避けた方がよい。
- 沈黙は、言葉にしにくい思いや関係を保つ手段にもなる。
- 黙っている人は、関係構築への意欲が低いと見なされる。
- 表現しないことは無関心の証であり、容認してはならない。
- 話し合いにおいて、沈黙は意味を持たない空白に過ぎない。
- 沈黙を排し、すべてを言語化する社会こそが理想である。
- 沈黙は真実の回避に使われるため、注意が必要である。
【正解と解説】
正解:5
- 選択肢1:× 沈黙には肯定的な側面があるとされている。
- 選択肢2:× 言葉にしないことで伝える力も肯定されている。
- 選択肢3:× 沈黙は共感や集中のしるしともなり得る。
- 選択肢4:× 誤解される一方で「意味を読み取る感性」が求められている。
- 選択肢5:◎ 「言葉にしにくいものを守る」「共感の証」など本文と一致。
- 選択肢6:× 意欲がないとは限らず、「関係を保つ手段」として働く場合がある。
- 選択肢7:× 無関心と決めつけることへの警鐘が鳴らされている。
- 選択肢8:× 空白ではなく「意味のある余白」とされている。
- 選択肢9:× 言語化の偏重が逆に問題とされることが多い。
- 選択肢10:△ 一部の沈黙は回避に使われるが、主張の中心ではない。
語句説明:
余白:語られていない部分に含まれる意味や可能性。
【本文の英訳】
In an age of constant speaking and posting, silence can seem empty. But silence isn’t always absence. Sometimes it protects feelings too deep for words. Sometimes it says, “I’m listening.” Silence may not be avoidance—it may be presence. If we learn to hear what silence holds, we gain a deeper kind of understanding.