評論文対策問題 066(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「それは言い訳だ」「言い訳せずに謝れ」といった言葉は、相手の話を打ち切るために使われることがある。
一般に、「言い訳」は責任逃れ、あるいは自己正当化として否定的に受け取られやすい。
しかし、私たちが言い訳をするとき、その奥には「理解されたい」という願いがある。
たとえば、「遅刻してごめん。でもどうしても電車が遅れて…」という言葉には、「自分のせいだけじゃないことを知ってほしい」という思いがにじんでいる。
言い訳とは、時に「自分の背景や事情を伝える試み」でもあるのだ。
また、人は言い訳をしながら、自分自身に対しても説明を試みている。
「なぜ自分はこうしたのか」「本当に責められるべきなのか」を問い直す過程として、言い訳があるとも言える。
言い訳は、ただのごまかしではなく、「未整理な感情を言葉にしようとする行為」でもある。
もちろん、それが常に正当化になるとは限らない。
だが、頭ごなしに「言い訳」として否定するのではなく、「何を伝えようとしているのか」「何を守ろうとしているのか」に耳を傾けることで、相手との関係はより深いものになり得るのではないか。
言い訳とは、私たちの不完全さがあらわになる瞬間であり、それをどう受けとめるかが、対話の質を左右するのだと思う。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 言い訳とは責任回避であり、聞く必要はない。
- 言い訳を認めることは、誤った行為を肯定することに等しい。
- 言い訳を減らすことが、誠実な人間関係を築く唯一の方法である。
- 言い訳は個人の弱さを象徴し、改善すべき行動である。
- 言い訳は相手を操作するための戦略でしかない。
- 言い訳は、自己理解や関係理解の入り口となることがある。
- 言い訳は、社会的責任を軽視する言動とみなされるべきである。
- 言い訳を聞くことは、無駄な感情の共有を生むにすぎない。
- 言い訳の背景にある感情は、対話において排除すべきである。
- 言い訳を受け入れることは、必ずしも相手を許すことにはならない。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 「耳を傾けることで関係が深まる」とされている。
- 選択肢2:× 「正当化」と「説明」は区別されている。
- 選択肢3:× 言い訳を通して理解が進むとされ、減らすことが主目的ではない。
- 選択肢4:× 弱さは「不完全さ」として肯定的に描かれている。
- 選択肢5:× 操作よりも「理解されたい」という思いが強調される。
- 選択肢6:◎ 「事情の説明」「自己理解」「関係を深める契機」など本文と一致。
- 選択肢7:× 軽視ではなく、「耳を傾けること」が大切とされている。
- 選択肢8:× 「感情を言葉にすること」自体が価値ある行為とされている。
- 選択肢9:× 感情を排除するのではなく「整理しようとする営み」として描かれる。
- 選択肢10:△ 一理あるが本文の中心主張からは外れる。
語句説明:
正当化:誤りや問題を「正しいもの」として主張すること。
【本文の英訳】
“Don’t make excuses.” Excuses are often seen as dodging blame. But sometimes, they are attempts to explain, to be understood. We say, “The train was late,” not just to shift blame, but to say, “Please see my situation.” Excuses can be a way to understand ourselves—and to be heard. If we listen not just to the words, but to what’s behind them, they can bring us closer. Excuses reveal our vulnerability. That’s where real dialogue begins.