評論文対策問題 065(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「知ること」は基本的に肯定的なものとして語られる。
知識が増えれば、判断の幅が広がり、視野が深まる。
学校教育でも「よく知ること」が重視され、無知は避けるべき状態とされてきた。
しかし、知ることには「重さ」がある。
たとえば、戦争や差別、環境破壊といった社会問題を知れば、それに対して「自分はどう行動するか」という問いが生まれる。
あるいは、他人の苦しみを知ったとき、「知ってしまった以上、無視できない」と感じてしまうこともある。
つまり、知ることは「責任」とセットになる場合があるのだ。
だからこそ、「知らなければよかった」と思ってしまうこともある。
それは怠惰や無関心ではなく、「知った結果として引き受けなければならない感情」や「行動へのプレッシャー」からくる葛藤なのだと思う。
情報があふれる現代では、「何を知るか」「どれだけ知るか」だけでなく、「知ったあとにどう向き合うか」という視点がより重要になっている。
知ることは、それ自体が目的ではなく、世界との関わり方を変える入口なのではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 知識は多ければ多いほど良く、それ自体に価値がある。
- 知ることによって行動を迫られるため、なるべく避けるべきである。
- 知らない方が精神的に安定するため、知識は必要最低限でよい。
- 知識を得ることで他人と比較されるリスクが増す。
- 知ることは感情の不安定さを生むため、注意が必要である。
- 知識は判断の材料となるが、同時に重い責任も伴うことがある。
- 他人の苦しみを知っても、自分に関係なければ行動の義務はない。
- 知るという行為には必ず誤解がともなうため、慎重にすべきである。
- 知識を得ても、それが行動に結びつかないなら意味がない。
- 知識は無条件に価値があるため、積極的に集めるべきである。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 知ることには「重さ」があるとされ、量だけでは評価されない。
- 選択肢2:× 「避けるべき」とは述べておらず、向き合う必要があるとされる。
- 選択肢3:× 精神的安定よりも「関わり方」が重視されている。
- 選択肢4:× 他人との比較については触れられていない。
- 選択肢5:× 感情の不安定さより、「責任」や「葛藤」に重点が置かれている。
- 選択肢6:◎ 「責任」「プレッシャー」「どう向き合うか」など本文と一致。
- 選択肢7:× 無関心や切り離しは本文で否定されている。
- 選択肢8:× 誤解よりも「知ることで生まれる責任」に焦点がある。
- 選択肢9:× 行動に結びつかなくても、「関わり方」が変わる点が強調される。
- 選択肢10:× 無条件ではなく、「知った後」が問われている。
語句説明:
功罪:良い点(功)と悪い点(罪)の両面。
【本文の英訳】
“Knowing” is often praised. But knowledge comes with weight. Learning about suffering or injustice can stir emotions—and questions of responsibility. We may wish we hadn’t known, not from apathy, but from fear of what knowing demands. In an age of information overload, it’s not just what we know, but how we respond to it, that defines us. Knowledge is not the end—it’s the beginning of how we choose to engage with the world.