評論文対策問題 062(本文1000字・選択肢10個+英訳)

本文(抜粋)

「それって普通じゃないよね」「まあ、普通に考えて」といった言い回しは、日常の中でごく当たり前に交わされている。
「普通であること」は、安心感や安定、正しさの象徴として語られることが多い。
しかし、「普通」という言葉ほど、その中身があいまいで、人によって異なる基準を含んでいるものはない。
ある人にとって「普通」な生活が、別の人にとっては到底そうとは言えないという状況は少なくない。
それにもかかわらず、「普通はこうだ」と言い切ることで、意見の異なる人、習慣や考え方が違う人を「変わっている」「ずれている」と排除する構図が生まれる。
「普通」という言葉は、明示的な批判を避けつつ、相手を否定するやわらかい装置としても働く。
また、「自分は普通だと思われたい」という欲望は、周囲とのずれを恐れ、自分の違和感を押し殺すことにもつながる。
「普通」という言葉が、知らず知らずのうちに「同じであること」への圧力を生み出してしまうのだ。
本来、違いがあることは自然なことであり、その違いを前提とした上で共に暮らす工夫こそが社会には必要なのではないか。
「普通」を基準に誰かを測るのではなく、「その人にとってどうか」「自分にとってどうか」を丁寧に問うこと。
そうした視点こそが、多様な価値観のなかで互いに尊重し合う関係を築く出発点になるのではないだろうか。

【問題】

筆者の主張に最も合致するものを選べ。

  1. 普通という言葉は中立的な意味しか持たず、問題視する必要はない。
  2. 普通を基準にすれば、社会のルールや秩序が自然に整う。
  3. 普通という価値観は、他者との対立を避けるための潤滑油である。
  4. 「普通ではない」とされる人々は、社会的に適応すべきである。
  5. 「普通」という基準は、共感を育てる言語的手段として有効である。
  6. 「普通」は他人をやわらかく排除する仕組みとして働くことがある。
  7. 自分が普通であることを望むのは、人間の本能的欲求である。
  8. 人と違うことは非合理であり、できるだけ避けるべきである。
  9. 普通に反する行動は、社会秩序を乱す可能性が高い。
  10. 「普通」という言葉を使わない社会こそ、理想的である。
【正解と解説】

正解:6

語句説明:
排除:ある集団や価値観から他者を除外し、関係の外に置くこと。

レベル:共通テスト対策(長文1000字+英訳)|更新:2025-07-23|問題番号:062


【本文の英訳】

“That's not normal,” “Just think normally”—such phrases are common in daily life. “Normal” seems to offer safety and correctness, but it often hides vague, shifting standards. What’s “normal” for one person may be strange to another. Using “normal” as a standard can softly exclude those who differ. It pressures people to hide their uniqueness to fit in. Instead of judging by what's “normal,” we should ask: What makes sense for this person, or for me? Respecting differences starts with rethinking the word “normal.”