評論文対策問題 061(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
社会問題や災害、差別や貧困などに直面したとき、「なぜ人は無関心でいられるのか」と問いかけられることがある。
確かに、目の前で苦しんでいる人がいるにもかかわらず、何も感じない、何も行動しないという態度は、冷たく非人間的に映る。
しかし、無関心とは本当に「感じないこと」なのだろうか。
実際には、「何かを感じたいが、どうしてよいかわからない」「近づきすぎると怖い」といった思いが、無関心という形をとって現れている場合もある。
無関心は、単なる冷酷さではなく、「傷つかないための距離のとり方」や「自分の無力さへの無言の反応」かもしれない。
また、情報が溢れる現代では、次から次へと届く悲惨なニュースに対して、感情のリソースが追いつかず、心を守るために「見ていないふり」をしてしまうこともある。
そのような中で、「無関心は悪」と断定してしまうと、むしろ「関心が持てない自分」を責め、さらに遠ざける結果にもなりかねない。
大切なのは、無関心に見える状態の背景にあるものに目を向け、「なぜその人は距離を取っているのか」「どうしたら近づけるのか」を想像することではないだろうか。
無関心の内側にも、恐れや戸惑い、疲労や無力感といった感情が存在する。
私たちが必要とするのは、無関心を非難することではなく、そこに隠れている声なき感情に耳を澄ませる想像力なのだと思う。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 無関心な態度は冷酷さの証であり、非難されるべきである。
- 社会問題に関心をもたない人は、自分の利害しか考えていない。
- 無関心は感情の欠如によるものであり、改善は困難である。
- 無関心でいることは、情報社会においてむしろ合理的な対応である。
- 関心をもたない者を変えるには、強く批判し行動を促すことが必要である。
- 無関心に見える背景には、恐れや無力感などの複雑な感情が潜んでいる。
- 共感を生むには、無関心を悪と決めつけず理解しようとする態度が必要である。
- 社会への関心は個人の自由であり、何を無視しても非難されるべきではない。
- 無関心に接するには、まず強く揺さぶるメッセージを発信する必要がある。
- 情報社会では、あらゆることに反応しない鈍感さが生き残る術である。
【正解と解説】
正解:6(と7)
- 選択肢1:× 無関心を即「冷酷」と決めつけることへの懸念が述べられている。
- 選択肢2:× 利己的というより、「恐れ」「無力感」などの要因が中心。
- 選択肢3:× 無関心の背景を理解し、想像力で近づくことが可能とされている。
- 選択肢4:× 合理性ではなく、「感情リソースの限界」として語られる。
- 選択肢5:× 批判ではなく「耳を澄ます想像力」が重要とされる。
- 選択肢6:◎ 「恐れや無力感」「距離のとり方」といった核心的記述に合致。
- 選択肢7:◎ 「非難するより、背景を想像する」=本文の最終結論。
- 選択肢8:× 非難ではなく「理解しようとする姿勢」が求められている。
- 選択肢9:× 強く揺さぶるより、「寄り添う想像力」が主張されている。
- 選択肢10:× 鈍感でいることを肯定はしていない。
語句説明:
リソース:資源・能力。ここでは感情的な余裕や精神的な力を指す。
【本文の英訳】
When faced with suffering, people often wonder: Why are others indifferent? But indifference may not mean “feeling nothing.” It can hide fear, overwhelm, or even silent compassion. In a world flooded with painful news, emotional resources are limited. Rather than condemning indifference, we should ask: What pain lies behind it? Sometimes, avoiding eye contact is a quiet cry. What we need is not blame, but the imagination to hear the feelings left unspoken.