評論文対策問題 060(本文1000字・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「はっきりしない」「どっちつかず」「曖昧なまま」といった表現は、否定的に使われることが多い。
現代は明確な意見や、論理的な説明が重視され、「曖昧であること」は思考力のなさや責任逃れと見なされがちだ。
しかし、曖昧さには独自の力がある。
たとえば、誰かの発言に対して即座に白黒つけるのではなく、「一理ある」「そうとも言えるかもしれない」と保留する態度は、他者の立場を認める余地を生む。
また、文化や価値観の異なる人々との対話では、「あいまいさを許容する力」が対話そのものを成り立たせる。
曖昧であるからこそ、相手の言葉に自分なりの意味を見出したり、立場の異なる人と「重なり合える部分」を探ったりできる。
曖昧さは、思考の「余白」や関係性の「間」を保つ装置なのだ。
もちろん、すべてを曖昧にすればよいというわけではない。
ただし、「明確であること」だけを正とし、「あいまいな言い方」や「保留の態度」を軽視する風潮は、対話の幅を狭め、異なる立場の人を排除する方向へと働きかねない。
曖昧さは、他者とともに考え続けるための「未決の空間」であり、すぐに答えを出さずに「保留しながら共にいる」ことも、共存の一つのかたちではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 曖昧な態度は、誤解や衝突を避けるための消極的手段である。
- 曖昧さは思考力が弱い人が選びがちな曖昧戦略にすぎない。
- 曖昧な言葉づかいは、対話を妨げる要因でしかない。
- 曖昧さを認めることは、相手に対する責任を回避する態度である。
- 曖昧さを避けることで、対話の効率と論理性が高まる。
- 曖昧さは、異なる立場の人と共に考え続けるために必要である。
- はっきりした態度をとることこそ、真の対話の出発点である。
- 曖昧さを排除することで、多様な意見の衝突が防げる。
- 曖昧さは、社会的には無責任さの象徴である。
- どんな状況でも明確さを優先することが、共存の基本である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 消極的ではなく「共に考える姿勢」として曖昧さが肯定されている。
- 選択肢2:× 思考の余白や関係性を保つ力として曖昧さが語られている。
- 選択肢3:× 曖昧な言葉が「重なり合う余地」を生むとされている。
- 選択肢4:× 保留の態度が「他者を尊重する手段」として重要視されている。
- 選択肢5:× 効率は上がるが「対話の幅が狭まる」と本文で示されている。
- 選択肢6:◎ 「保留しながら共にいる」「未決の空間」などの表現と一致。
- 選択肢7:× はっきりすることのみを出発点とする考え方は本文と対立。
- 選択肢8:× 衝突を避けるより「重なり合う余地」を重視している。
- 選択肢9:× 無責任ではなく、「尊重や共存のかたち」として捉えられている。
- 選択肢10:× 明確さの偏重は「排除的になりうる」と批判されている。
語句説明:
余白:余地、空間、未決の部分。思考や対話の余韻を残す空間。
【本文の英訳】
“Ambiguity” is often viewed negatively in a world that values clarity. But being vague isn't always a weakness—it can be a space where differences meet. Saying “maybe” or “you might be right” keeps dialogue open. Especially in diverse contexts, ambiguity allows people to interpret, pause, and listen. Too much clarity can shut down nuance. Ambiguity lets us think together without rushing to a conclusion. It’s not indecision—it’s a way to stay connected while still wondering.