評論文対策問題 047(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
私たちは、誰かに見られているとき、そうでないときとは違う振る舞いをする。
たとえ実際に他人がいなくても、「他人の目を意識する」だけで、行動は変わる。
この「視線の存在」は、人間の社会性を支える重要な装置とも言える。
なぜなら、それによって私たちは無秩序にふるまわず、公共性や配慮を保てるからだ。
しかし同時に、「他人の目」が強くなりすぎると、自分の欲望や判断を抑え込み、常に「見られる自分」を演じ続けてしまうことにもなる。
他人の視線が内面化されることで、「何をすべきか」ではなく「どう見えるか」で行動が決まるという逆転が起こる。
それは、自由な自己決定の妨げにもなりかねない。
他人の目を意識することは、社会的な秩序を支える力にもなるが、同時に、自己の軸を失わせるリスクもはらんでいる。
だからこそ私たちは、「誰の目を意識しているのか」「それは必要な視線か」を問い直しながら、自らのまなざしを取り戻していく必要がある。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 他人の目を気にするのは未熟な行為であり、克服すべきである。
- 人は他人の目を意識しなければ、社会で秩序を保つことはできない。
- 他人の視線を完全に無視することが、真の自由につながる。
- 他人の目を恐れるあまり、個人は社会から離脱すべきである。
- 他人の視線があるからこそ、人は自然な自分を保つことができる。
- 他人の目を意識することには、利点と同時に弊害もある。
- 他人にどう見えるかを常に考えることは、健全な社会性の証である。
- 社会秩序を保つには、他人の目を制度として強制すべきである。
- 他人の視線を受け入れることは、常に正しい行為の基準となる。
- 他人の目は意識せず、自分の価値観のみに従うべきである。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 視線の内面化には利点もあるとされており、一概に否定されていない。
- 選択肢2:× 視線の効用は認めつつ、「強くなりすぎると危険」とされている。
- 選択肢3:× 無視すべきとはされておらず、「問い直しながら向き合う」ことが重要とされる。
- 選択肢4:× 社会との断絶ではなく、視線とのバランスが求められている。
- 選択肢5:× 「自然な自分」が保たれない危険性が述べられている。
- 選択肢6:◎ 「公共性を保つ力」と「自己喪失のリスク」=本文の両義的構造に一致。
- 選択肢7:× 常に他人の目を気にすることは、「自由な自己決定の妨げ」とされている。
- 選択肢8:× 制度的強制ではなく、「問い直し」が必要とされている。
- 選択肢9:× 正しさの基準としてではなく、「内面化の危険」が語られている。
- 選択肢10:× 自分の価値観のみに従うことも危ういとされる含意がある。
語句説明:
内面化:外からの視線や価値観を、自分自身の中に取り込んでしまうこと。
【本文の英訳】
We behave differently when we feel we are being watched. Even without others present, just imagining someone watching us can affect how we act. This “gaze of others” is a social mechanism that helps maintain order and consideration. But when that gaze becomes too dominant, we may suppress our own desires and live as if constantly performing. We begin to act not based on what we believe is right, but on how we appear to others. This can compromise our ability to make authentic choices. While the awareness of others is useful for social order, it can also erode our personal identity. Therefore, we must ask ourselves: Whose gaze are we internalizing, and is that gaze necessary? In doing so, we may reclaim our own perspective.