評論文対策問題 044(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
現代社会では、「役に立つこと」がしばしば価値の基準とされる。
効率、成果、実用性――こうした言葉が称賛される一方で、「無駄」とされる行為は軽視されがちである。
しかし、本当に「無駄なこと」には価値がないのだろうか。
たとえば、散歩に出て目的もなく歩く時間、無意味に見える雑談、意味のない落書き――それらは直接的な成果を生まないかもしれない。
だが、そうした「余白」の中にこそ、人はふと気づきを得たり、心をゆるめたりすることがある。
「無駄」とは、ただ役に立たないことを指すのではなく、既存の評価軸では捉えきれない体験や感覚を含む領域なのかもしれない。
むしろ、すべてを「意味」や「効率」で判断しようとする社会の在り方にこそ、問いが必要なのではないか。
無駄を許容することは、人間の存在そのものに対するまなざしでもある。
役に立たないからこそ、そこに自由があり、遊びがあり、予測を超える豊かさが生まれるのだ。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 無駄な行為は人生の中から徹底的に排除すべきである。
- 無駄なことをしている時間は、人間の成長を妨げる。
- 効率や成果に結びつかない行為には意味がない。
- 無駄なことを評価する社会は非合理的である。
- 無駄なことは、他人に迷惑をかける可能性があるため避けるべきである。
- 無駄の中には、既存の価値では測れない重要なものがある。
- 役に立つかどうかで物事を判断することは正しい姿勢である。
- 無駄は退屈と同じであり、創造性を妨げる存在である。
- 無駄なことをしている人は社会的に認められない。
- 無駄を楽しむことは、人間の自由や豊かさにつながる。
【正解と解説】
正解:6(と10)
- 選択肢1:× 「排除」よりも「許容」や「見直し」がテーマ。
- 選択肢2:× 「心をゆるめたり、気づきを得たり」する機会があると述べている。
- 選択肢3:× 意味や効率で測れない価値があるという主張。
- 選択肢4:× 無駄を評価できる社会の柔軟性がむしろ肯定されている。
- 選択肢5:× 他人への迷惑には触れておらず、むしろ個的な自由の領域として無駄が語られている。
- 選択肢6:◎ 本文「既存の評価軸では捉えきれない」「問いが必要」に対応。
- 選択肢7:× 効率判断一辺倒への警鐘が本文の基調。
- 選択肢8:× 創造性を妨げるとは真逆の主張がされている。
- 選択肢9:× むしろ「社会に認められにくい」からこそ見直すべきと示唆。
- 選択肢10:◎ 「自由」「遊び」「豊かさ」など本文の終結と一致。
語句説明:
余白:予定や意味づけがされていない、空間や時間のゆとりのこと。
【本文の英訳】
In today’s world, things are often valued based on their usefulness. Efficiency, results, practicality—these terms are praised, while "useless" actions are easily dismissed. But are seemingly “pointless” things really worthless? For instance, walking aimlessly, chatting without a goal, or doodling for no reason may yield no direct results. Yet in those moments, we often find unexpected insight, relaxation, or a sense of play. “Uselessness” may not mean lacking value, but rather offering experiences beyond standard metrics. Perhaps it's our utility-centered view of society that should be questioned. Allowing for uselessness is a way of honoring the fullness of being human. Precisely because it’s “not useful,” it creates space for freedom, play, and unpredictable richness.