評論文対策問題 041(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
「感情は個人的なもの」と私たちは思いがちである。
たしかに、怒り、悲しみ、喜びといった感情は、自分の内側から湧き上がるように感じられる。
しかし、その感情は本当に「自分だけのもの」なのだろうか。
たとえば、怒りを感じる基準や、何を恥ずかしいと思うかは、文化や社会の価値観によって大きく左右される。
感情は、他者や状況との関係性の中で生じ、表現の仕方や受け止められ方もまた、社会的に学ばれている。
子どもが転んで泣いたとき、大人がどう反応するかによって、その子の感情の扱い方も変わっていく。
つまり、感情は生まれつきの反応ではなく、周囲とのやりとりを通じて形づくられていく側面がある。
それゆえ、感情には「公共的な性質」が含まれている。
感情を理解するとは、その背景にある社会的・文化的な土台や関係性を読み取ることでもあるのだ。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 感情は完全に生得的なものであり、社会とは無関係である。
- 感情は個々人の自由に任されるもので、共有する必要はない。
- 感情の表現は誰にも制御されるべきではない。
- 感情は文化の影響を受けず、自然のままに表れる。
- 感情は完全に個人の内側に閉じた現象である。
- 感情は社会的・文化的な関係の中で育まれる側面がある。
- 感情の理解は本人の体験だけに基づけば十分である。
- 子どもの感情は自然なものであり、大人の関わりは影響しない。
- 感情は常に理性より劣るため、教育の対象にはなりにくい。
- 感情の扱いには、個人差よりも遺伝的要因が優先される。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 感情は社会の影響を受けると明記されている。
- 選択肢2:× 「共有の性質=公共性」が本文の核心。
- 選択肢3:× 表現の仕方も「学ばれるもの」とされている。
- 選択肢4:× 文化や状況により左右されると本文で述べられる。
- 選択肢5:× 完全に「内側に閉じた」ものではないと主張されている。
- 選択肢6:◎ 「感情は社会的関係の中で育つ」=本文の主張そのもの。
- 選択肢7:× 本人の体験のみでは足りず、「社会的土台を読み取る」とされる。
- 選択肢8:× 大人の反応によって感情の扱い方が変わると明記されている。
- 選択肢9:× 感情が劣るとは書かれておらず、理解の対象とされている。
- 選択肢10:× 遺伝よりも「社会的関係性」に重きが置かれている。
語句説明:
公共的な性質:個人に属しつつも、社会的に共有・影響される側面を持つこと。
【本文の英訳】
We tend to think emotions are entirely personal. Emotions like anger, sadness, or joy feel as if they arise solely from within. But are our feelings really just our own? Cultural and societal norms greatly influence what we feel anger about or what we find embarrassing. Emotions arise in relationship to others, and how we express or interpret them is shaped by our environment. When a child falls and cries, the adult’s reaction can affect how that child learns to deal with emotion. In other words, emotions are not purely innate—they develop through interactions with others. In this sense, emotions carry a “public” aspect. To truly understand emotions, we must also consider the social and cultural frameworks behind them.