評論文対策問題 037(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
私たちは日常的に、「これはAで、あれはB」と物事を分類し、境界を引いて理解しようとする。
境界を設けることは、思考を整理し、行動の基準を明確にするうえで欠かせない行為である。
しかし、その境界はしばしば「違い」を強調しすぎてしまい、「理解し合えない」という前提を生み出す危険もある。
たとえば、ある国の文化が自国とは異なるとき、「私たちとあの人たちは違う」と切り分けてしまえば、対話の余地は狭まる。
境界を引くこと自体が悪いのではない。問題は、境界を絶対化し、それを越えることを拒む態度にある。
むしろ、「ここに境界がある」と認識した上で、「それを越えて関わるにはどうすればよいか」と考えることが、対話の出発点になる。
境界があるからこそ、越えるという営みに意味が生まれるのだ。
違いを無理に消すのではなく、違いを認めつつ、それでも共に生きる道を探すこと。
それが、現代社会における成熟した共存のあり方ではないだろうか。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 境界は曖昧であるため、常に取り除くべきである。
- 違いをなくして一つに統一することが、対話の第一歩となる。
- 文化の違いは、他者との関係性を断絶する根本的な障害である。
- 境界を越えることは無理であり、分断を前提とする方が現実的である。
- 違いをなくすよりも、違いを認識した上で関わる姿勢が重要である。
- 境界線を絶対視することで、社会秩序は安定する。
- 違いがあることは問題であり、完全な同一性を目指すべきである。
- 境界は思考を混乱させるため、なるべく意識しない方がよい。
- 境界が存在する限り、相互理解は不可能である。
- 境界とは人間の錯覚であり、実際には存在しない概念である。
【正解と解説】
正解:5
- 選択肢1:× 境界は思考を整理する役割があり、必ずしも否定されていない。
- 選択肢2:× 違いをなくすのではなく、認識した上で関わることが重要とされている。
- 選択肢3:× 断絶ではなく、「関わり方を模索する」ことが求められている。
- 選択肢4:× 境界は越えられるものであり、「越える意味」が強調されている。
- 選択肢5:◎ 本文終盤「違いを認めつつ共に生きる」が本文の結論と一致。
- 選択肢6:× 境界の絶対視は、対話を妨げると批判されている。
- 選択肢7:× 違いを否定するのではなく、「認める」ことが鍵。
- 選択肢8:× 境界は意識すべき対象として捉えられている。
- 選択肢9:× 相互理解は「境界を越える営み」の中にあるとされている。
- 選択肢10:× 境界は「存在するが、それをどう越えるか」がテーマ。
語句説明:
境界を絶対化する:区分を固定的に捉え、それを乗り越えようとしない態度。
【本文の英訳】
In everyday life, we classify things by drawing boundaries—this is A, that is B. Setting boundaries helps us organize our thoughts and clarify how we act. But these boundaries can also overemphasize differences and create the assumption that mutual understanding is impossible. For instance, if we treat a foreign culture as entirely separate from ours, dialogue becomes harder. The issue is not in drawing boundaries themselves, but in treating them as absolute and refusing to cross them. True dialogue begins when we acknowledge the boundary and still ask, “How can we connect across it?” The existence of a boundary gives meaning to the act of crossing it. Rather than erasing differences, we should recognize them while still seeking ways to live together. That is what mature coexistence in modern society requires.