評論文対策問題 036(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
現代社会は「答え」を重視する傾向が強い。
テストでの正答、仕事での即時の成果、会話における明快な結論――こうした「速さ」と「正確さ」が評価される場面は多い。
しかし、すぐに答えを出すことが、常に最善とは限らない。
複雑な問題や人生の選択においては、「まだわからない」「考え続けている」といった姿勢こそが、深い理解へとつながる場合もある。
問いを保留し、その問いとともに時間を過ごすことは、思考の幅や想像の奥行きを育む営みである。
子どもが「なぜ空は青いの?」と問いかけるとき、大人がすぐに正解を与えてしまえば、そこで思考が止まってしまうかもしれない。
逆に、「どうしてだろうね」「一緒に考えてみよう」と問いを共有することで、より豊かな探求が始まる。
問いは、答えを導くためだけにあるのではなく、世界を深く見つめ、関わり方を変える力を持っている。
「よい問い」を持ち続けることは、単に知識を得る以上に、私たちのあり方そのものを形づくる行為なのだ。
【問題】
筆者の主張として最も適切なものを選べ。
- 答えがわからない状態は知的に未熟であり、できるだけ早く解消すべきである。
- 問いに時間をかけるよりも、正解をいち早く与える方が教育的である。
- 問いは無駄を生むだけであり、効率を下げる行為である。
- すべての問いには明確な答えがあるため、それを素早く見つけることが重要である。
- 問いの保留は、思考の停滞を招くため避けるべきである。
- 問いかけを共有することで、より深い探求や想像が生まれる。
- 答えを出すことよりも、常に問い続ける姿勢が無責任である。
- 問いの価値は正答が見つかった時点で終わる。
- 「よい問い」を持ち続けること自体が、人の思考や在り方に意味を与える。
- 複雑な問いには近づかず、簡単な問いで思考を訓練すべきである。
【正解と解説】
正解:6(と9)
- 選択肢1:× 「答えを急がないことの重要性」が主張されている。
- 選択肢2:× 教育における「共有と探求」の方が望ましいとされている。
- 選択肢3:× 無駄どころか「思考の幅や想像の奥行き」が育まれるとされる。
- 選択肢4:× 明確な答えがない問いこそ重要という立場。
- 選択肢5:× 保留することの価値が強調されている。
- 選択肢6:◎ 「一緒に考える」「問いを共有」が本文主張の中心。
- 選択肢7:× 問い続けることがむしろ思考の深まりとされている。
- 選択肢8:× 問いの意義は「過程そのもの」にあるとされている。
- 選択肢9:◎ 結語「あり方を形づける行為」に対応。
- 選択肢10:× 複雑な問いにこそ向き合う意義が説かれている。
語句説明:
問いを保留する:すぐに答えを出さず、考え続ける状態を大切にすること。
【本文の英訳】
Modern society tends to value “answers.” Whether in tests, work, or conversation, speed and accuracy are often prioritized. However, rushing to a conclusion isn’t always best. When dealing with complex issues or life choices, saying “I’m still thinking about it” can lead to deeper understanding. Holding a question and living with it cultivates broader thinking and imagination. If a child asks, “Why is the sky blue?” and an adult gives a quick answer, that might stop further curiosity. But replying, “I wonder too—shall we think about it together?” invites shared exploration. Questions are not only for reaching answers—they help us see the world more deeply and reshape our engagement with it. Continuing to carry a meaningful question can shape how we live and who we are.