評論文対策問題 034(本文2倍・選択肢10個+英訳)
本文(抜粋)
自分が「正しい」と信じるとき、人はしばしば強く主張する。
しかし、その「正しさ」は本当に普遍的なものだろうか。
多くの場合、正しさとはその人が属する文化、経験、価値観に基づいた一つの見方にすぎない。
にもかかわらず、人は自分の正しさを「相手を変える武器」として使ってしまいがちだ。
こうした態度は、議論を「勝ち負けの場」にしてしまい、本来の目的である理解や共通点の発見から遠ざける。
対話において大切なのは、「相手を打ち負かすこと」ではなく、「相手がなぜそう考えるのか」に耳を傾けることである。
自分の考えが揺らぐことを恐れず、むしろ揺らぐことで広がる視野もある。
そのとき、正しさは「主張」ではなく「問い」になる。
本当に豊かな対話とは、自分の正しさを一度保留し、相手の語る世界に入ってみることで生まれるのかもしれない。
【問題】
筆者の主張として最も適切なものを選べ。
- 正しさは普遍的なものであり、他人の意見は基本的に誤っている。
- 議論においては、相手を論破して優位に立つことが重要である。
- 自分の正しさを強く押し出すことで、対話が深まる。
- 相手の主張に影響されず、自分の信念を貫くことが誠実さの証である。
- 相手の言うことに反論せず、沈黙を保つことが成熟した態度である。
- 自分の考えに揺らぎが生じることは、思考が深まる契機となる。
- 正しさとは、常に他人に証明しなければならないものである。
- 相手の意見を否定せず受け入れることが、唯一の正しい対話法である。
- 議論では、自分の立場をいかに明確に表明するかが最優先である。
- 文化や価値観が異なれば、対話は成立しない。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 正しさは「文化や経験による一つの見方」とされている。
- 選択肢2:× 「勝ち負けの場」にすることが問題とされている。
- 選択肢3:× 強く押し出す態度は対話を遠ざけると指摘されている。
- 選択肢4:× 揺らぐことを恐れずに受け入れることが重要とされる。
- 選択肢5:× 沈黙が望ましいとは書かれていない。
- 選択肢6:◎ 「揺らぎで視野が広がる」「問いとしての正しさ」が本文主旨に合致。
- 選択肢7:× 証明することよりも、保留する姿勢が重視されている。
- 選択肢8:× 無条件の受容が唯一の方法とはされていない。
- 選択肢9:× 表明よりも「相手の世界に入ってみる」ことが優先される。
- 選択肢10:× 文化差を超えて「共通点を探ること」が可能とされている。
語句説明:
保留:判断や主張をいったん止めて、相手や状況を見つめ直す姿勢。
【本文の英訳】
When we believe we are "right," we often assert ourselves strongly. But is that “rightness” truly universal? In many cases, what we think is right is merely one perspective shaped by culture, experience, and values. Nonetheless, we tend to wield our sense of rightness as a weapon to change others. This turns discussions into battles, distancing us from the original purpose of dialogue: understanding and discovering common ground. What matters in conversation is not defeating the other person, but listening to why they think as they do. Being willing to let our own views be shaken can actually broaden our perspective. In such moments, rightness transforms from a “statement” into a “question.” True dialogue may begin when we pause our own claims and step into the world the other person describes.