評論文対策問題 031(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
私たちの社会は、かつてないほど多くの「記号」に満ちている。
商品のブランドロゴ、SNSでの「いいね」数、ランキング、スタンプ、さらには表情の絵文字までもが、私たちの感情や価値を代理している。
本来、記号とはある対象を表す代替物であり、それ自体が現実というわけではない。
しかし、現代では「記号が記号を参照する」状態が加速しており、私たちは本来の意味や現実を見失いがちになっている。
たとえば、SNSで「いいね」が多い投稿が「よいもの」とされ、そこにある出来事や感情よりも、記号の数値によって現実が評価されてしまう。
このような状況では、「リアル」とは何か、「価値」はどこにあるのかが、記号のネットワークの中に埋もれてしまう危険がある。
記号は必要である。だが、それが現実そのものと取り違えられたとき、私たちは他者との距離や出来事の質感を喪失する。
問われているのは、「何を表しているか」を見抜く力であり、記号の背後にある現実へのまなざしを取り戻すことである。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 記号は現実を忠実に再現するものであり、それを通せば本質が理解できる。
- 現代社会においては、現実の質感よりも記号の整理が重要である。
- 記号は便利であるが、それを現実そのものと誤解してはならない。
- 記号の氾濫により、人間はもはや他者との共感を必要としなくなった。
- 現実とは常に記号によって構成されるものであり、それ以外の捉え方は幻想である。
- 「いいね」などの記号は社会に秩序をもたらす役割を果たしているため、積極的に評価基準とすべきである。
- 現実の本質を知るには、記号をできるだけ排除することが最善である。
- 人間は本能的に記号を重視するため、それに抗うのは不可能である。
- 現代では、すべての感情や価値判断は記号を通じてしか表現できない。
- 重要なのは、記号の背後にある現実を読み取る視点を持つことである。
【正解と解説】
正解:3(と10)
- 選択肢1:× 記号は「代替物」とされ、「忠実な再現」ではないと明記。
- 選択肢2:× 質感や現実へのまなざしの重要性が強調されている。
- 選択肢3:◎ 「便利ではあるが」「誤解してはならない」=本文のバランスと一致。
- 選択肢4:× 他者との距離の喪失は問題として語られているが、共感不要とは述べていない。
- 選択肢5:× 「記号に埋もれること」への警鐘が主題。
- 選択肢6:× 数字による評価が本質を隠してしまうと批判されている。
- 選択肢7:× 排除ではなく、「見抜く力」「現実へのまなざし」が求められている。
- 選択肢8:× 抗うことが重要と示唆されており、「不可能」とはしていない。
- 選択肢9:× 記号による表現しかできないとは述べていない。
- 選択肢10:◎ 最終文「記号の背後にある現実へのまなざし」=本文の結論と一致。
選択肢を見抜くテクニック:
- 「便利さの肯定」+「誤解への警戒」というバランス構造に注目
- 本文末の結語と一致する選択肢が出題されることが多い
語句説明:
記号のネットワーク:意味を持つ記号が互いに参照し合い、現実から独立して流通してしまう状態。