評論文対策問題 029(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
私たちは、言葉を使って意思を伝えることに慣れている。
しかし、沈黙もまた、立派なコミュニケーションの一形態である。
たとえば、会議の場で誰も発言しない時間があったとき、それは単なる思考のための間かもしれないし、異論を言い出しにくい空気の表れかもしれない。
また、親しい人と一緒に黙って過ごす時間が心地よいものであるように、沈黙は関係性によってまったく異なる意味を持つ。
日本語においては、あえて言葉にしないことで相手への配慮や場の調和を優先する文化的傾向も見られる。
一方で、西洋の一部文化では、沈黙は不安や非協力のサインと受け取られることもある。
このように、沈黙には明確な「意味」があるとは限らず、文脈や関係性によって多義的に変化する。
大切なのは、沈黙そのものを「無言=無意味」と切り捨てるのではなく、それがなぜ起きているのか、どのような状況で共有されているのかを丁寧に読み取ろうとする姿勢である。
言葉がすべてを語るわけではない以上、沈黙をどう受け止めるかが、人間関係の質を左右することもあるのだ。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 沈黙は意図のない状態であり、意味を持たない。
- 沈黙は基本的に消極的で否定的な態度を表す。
- 文化によっては沈黙を避けるべきものと見なす傾向がある。
- 沈黙の価値は、言葉の明確さによってのみ判断される。
- 沈黙は不快感の表れであり、相手を無視する行為である。
- 沈黙は常に意味を持つが、その意味は普遍的である。
- 沈黙を無意味と決めつけず、文脈や関係性から丁寧に読み解くことが大切である。
- 沈黙よりも言語的コミュニケーションの方が、信頼構築には効果的である。
- 沈黙が心地よいと感じるのは、誤解を避けたい心理の現れである。
- 沈黙の解釈には個人差がないため、共通理解は容易である。
【正解と解説】
正解:7(と3)
- 選択肢1:× 「無意味ではない」が本文の中核。
- 選択肢2:× 文化や関係性によっては肯定的意味を持つ。
- 選択肢3:◎ 「西洋では沈黙を不安と捉える文化」=本文に一致。
- 選択肢4:× 言葉だけでは判断できないと筆者は述べている。
- 選択肢5:× 一部の状況ではそうかもしれないが、断定的で本文と合わない。
- 選択肢6:× 普遍的ではなく「多義的」であるとされている。
- 選択肢7:◎ 「文脈・関係性を丁寧に読み解く姿勢」=本文終盤と一致。
- 選択肢8:× 言葉より沈黙の方が深い意味を持つこともあると述べられている。
- 選択肢9:× 心地よさの背景は「関係性」にあると述べており、この解釈は限定的すぎる。
- 選択肢10:× 「個人差・文化差がある」が本文の明確な主張。
選択肢を見抜くテクニック:
- 「沈黙=無意味」か「沈黙=文脈依存」かを見極める
- 文化比較(東西)に触れている選択肢が本文に沿っているか確認
語句説明:
多義的:一つの行為や言葉が、複数の意味を持ち得る状態。