評論文対策問題 023(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
他者を理解するということは、実は非常に困難な営みである。
なぜなら、私たちは決して他人の経験や内面を直接見ることができないからだ。
それにもかかわらず、「わかったつもり」になることがある。
「自分も同じような経験をしたことがあるから」と共感を語るとき、それが本当に相手の感情に届いているとは限らない。
むしろ、自分の経験を基準に他人の感情を「理解した」と思い込むことは、相手の複雑な心のありようを平板化し、見誤る危険すらある。
だからこそ、想像力が必要になる。
想像力とは、自分と異なる背景や文脈の中で生きてきた他者の立場を、完全にはわからないと知りつつも、なんとか想像しようとする態度である。
そしてこの「完全にはわからない」という前提が、かえって相手への敬意や配慮を生む土台になる。
理解とは、到達することではなく、想像し続ける姿勢のなかにこそ存在するのかもしれない。
【問題】
筆者の主張として最も適切なものを選べ。
- 他者理解は経験の共有によって完全に成立する。
- 自分と異なる背景を持つ人の気持ちは理解不能なので、関わる必要はない。
- 共感とは、自分の感情を相手に当てはめて解釈する行為である。
- 想像力を働かせても、他者の心を正確に理解することはできないから無意味である。
- 他者理解には、相手の感情をデータとして客観的に扱う視点が必要である。
- 「わからない」という前提のもとで他者を想像し続けることに意味がある。
- 同じ経験を持っていれば、他人の感情は完全に再現できる。
- 共感の本質は、自分の経験をもとに相手を分類することにある。
- 想像力を鍛えるには、まず他者の行動を評価・分析する力が求められる。
- 理解できない相手には、何を言っても意味がないので距離をとるのが妥当である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 「同じ経験=完全理解」は本文で否定されている。
- 選択肢2:× 「異なる他者に想像を向けること」がむしろ筆者の主張。
- 選択肢3:× 自分の感情を当てはめるのは「見誤る危険」があるとされている。
- 選択肢4:× 「無意味」とはされておらず、むしろ想像し続ける姿勢が肯定されている。
- 選択肢5:× データ的客観視ではなく、想像による接近が主題。
- 選択肢6:◎ 「完全にはわからない」と知りながらも「想像し続ける」が本文の核心。
- 選択肢7:× 本文は「同じ経験でも誤解しうる」と警告している。
- 選択肢8:× 「分類する」行為は筆者の批判対象に近い。
- 選択肢9:× 分析ではなく、想像と敬意の姿勢が求められている。
- 選択肢10:× 理解できなくても想像し続ける意義が強調されている。
選択肢を見抜くテクニック:
- 本文に頻出するキーワード「想像し続ける」「完全にはわからない」を含むか
- 他者理解を断定的に語る選択肢(できる/できない)には警戒
語句説明:
想像力:相手の立場や状況に身を置いて考える能力。理解しきれないことを前提としつつ、接近しようとする姿勢。