評論文対策問題 022(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
道具とは、人間の行動を拡張するものである。
ナイフは手の力では不可能な切断を可能にし、自動車は人の足では届かない距離へと移動を可能にする。
しかし同時に、道具は単に人間を助ける存在ではない。
それは、人間の行動や発想、さらには価値観までも変化させる力を持っている。
スマートフォンの普及によって「いつでも連絡が取れる」ことが前提となり、人間関係の間合いや時間感覚が変化したように、道具は私たちの「当たり前」を作り変えていく。
しかもそれは、あくまで無意識のうちに進行するため、変化に気づきにくいという特徴がある。
道具はただの「手段」ではなく、世界や他者との関係を組み替える「環境」でもあるのだ。
したがって、道具を評価する際には、その便利さだけでなく、「私たちの行動や思考がどう変わるか」という視点からの再検討が必要である。
私たちが道具を使っているようでいて、実は道具の設計思想に合わせて、私たち自身が形作られているのである。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 道具はあくまで人間の命令通りに動くだけの存在である。
- 道具の役割は、人間の負担を軽くすることに限られている。
- 人は道具を設計するが、道具は人間の価値観には影響を与えない。
- 道具は人間の文化とは無関係に存在する中立的な物体である。
- 道具の進化によって、人間の本質はますます変化しなくなっている。
- 便利な道具ほど、人間の感覚や行動を無意識に変える力を持っている。
- 道具を使うことで、人間はむしろ本来の能力を失っていく一方である。
- 道具の便利さは重要だが、それ以上に人の思考への影響を検討すべきである。
- 人間の価値観は、生まれながらにして固定されたものであり、道具によって変化しない。
- 道具は文化を破壊する危険性があるため、利用を最小限に抑えるべきである。
【正解と解説】
正解:6(と8)
- 選択肢1:× 「命令通り」だけでなく、「行動や価値観を変える力」が本文の主張。
- 選択肢2:× 「負担軽減」だけにとどまらない深い影響が強調されている。
- 選択肢3:× 道具は価値観にも影響すると明言されている。
- 選択肢4:× 「中立的な物体」ではなく「環境」として私たちに作用する。
- 選択肢5:× むしろ「変化する」ことが本文のテーマ。
- 選択肢6:◎ 「無意識に変える」「便利さと影響力」が本文の中核。
- 選択肢7:× 本文では「能力を失う」という悲観的な視点には立っていない。
- 選択肢8:◎ 「便利さ以上に思考への影響を検討すべき」=本文末の主張と一致。
- 選択肢9:× 価値観は固定ではなく、道具によって「形作られる」と明記。
- 選択肢10:× 道具の利用を否定はしておらず、「意識して再検討すべき」としている。
選択肢を見抜くテクニック:
- 道具の中立性を信じすぎている選択肢に注意
- 便利さだけでなく、無意識への影響や設計思想への言及を探す
語句説明:
設計思想:道具や機器が設計される際に前提とされる価値観や使い方の想定。使用者に特定の行動や意識を促す力を持つ。