評論文対策問題 021(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
日常とは、私たちが「当たり前」として過ごしている時間や風景のことである。
しかし、この「当たり前」は、決して初めからそこにあったものではない。
慣れや習慣によって、私たちの感覚が鈍り、違和感や疑問を抱かなくなった結果、「当たり前」になったにすぎないのだ。
だからこそ、日常に潜む「驚き」を再発見することは、思考の幅を広げるきっかけとなる。
たとえば、毎朝通っている通学路の石畳の形が少しずつ異なること、いつもすれ違う人が微妙に異なる表情をしていること、それらは普段は意識されないが、見方を変えるだけで新鮮な発見となる。
こうした日常の再発見は、芸術や哲学の営みにも通じる。
芸術とは、見慣れたものの中に「見慣れなさ」を生み出す営みであり、哲学とは、当然と思われている前提を問い直す営みである。
私たちは、ときに立ち止まり、「これは本当に当たり前なのか?」と問うことで、日常に新たな光を当てることができる。
世界は、ただそこにあるのではなく、私たちのまなざしによって常に再構成されている。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 日常は完全に固定された構造であり、誰にとっても同じである。
- 日常の中に驚きを見出すことは、非日常的な経験を否定することになる。
- 習慣や慣れは、私たちを鋭い感性から守ってくれる重要な機能である。
- 日常の驚きは芸術や哲学の営みとは無関係である。
- 見慣れたものに疑問を持つことで、世界の捉え方は更新されうる。
- 当たり前と思われていることは、実際にはすべて合理的な理由に基づいている。
- 世界は客観的に存在しており、個人の見方では変化しない。
- 同じ場所や人に繰り返し出会うことこそが、安心できる世界の証拠である。
- 再発見や問い直しは、日常に混乱を生むため控えるべきである。
- 世界は、私たちの問いや視点によって常に意味づけられている。
【正解と解説】
正解:10(と5)
- 選択肢1:× 日常は「再構成される」と本文にあり、固定ではない。
- 選択肢2:× 「非日常」を否定する議論ではなく、「日常にも驚きがある」ことに焦点。
- 選択肢3:× 鋭い感性を鈍らせることこそが問題とされている。
- 選択肢4:× 芸術や哲学との共通性が本文で強調されている。
- 選択肢5:◎ 「問い直す」「光を当てる」→本文の哲学的視点と一致。
- 選択肢6:× 「合理性」ではなく「慣れによる鈍化」が本文の議題。
- 選択肢7:× 「見方によって再構成される」とあり、本文と逆。
- 選択肢8:× 安心感は議論されておらず、変化や発見の可能性が主眼。
- 選択肢9:× 問い直しは混乱ではなく「再発見」として肯定的に扱われている。
- 選択肢10:◎ 本文最終文と完全に一致。「再構成される」がキーワード。
選択肢を見抜くテクニック:
- 「問い直し」「再発見」という能動的な姿勢に関する表現に注目
- 本文の結語(最後の2文)と一致する表現を見つける
語句説明:
まなざし:単なる「見る」という動作ではなく、意識の向け方や認識の枠組みを含む視線の在り方。