評論文対策問題 020(本文2倍・選択肢10個)

本文(抜粋)

記憶とは、過去の出来事を蓄積した客観的なデータの集積ではない。
私たちが「覚えている」と信じていることの多くは、実は後から意味づけられたり、他人との会話の中で再構成されたものである。
たとえば、幼少期の記憶の多くは、親や周囲の語りによって「思い出」として形成されることがある。
また、自分自身の語りたい物語に合わせて、過去の経験が無意識のうちに編集されることすらある。
つまり記憶とは、出来事そのものではなく、「出来事がどう語られるか」というプロセスの中で絶えず変化している。
このような記憶の性質は、アイデンティティ形成とも密接に関係している。
自分が何者であるかを語るとき、私たちは都合よく過去を選び取り、自らを語る枠組みに組み込んでいる。
記憶は単なる記録ではなく、「私」という存在を語り、他者と共有するための語りの素材でもある。
だからこそ、「どのように思い出すか」「どう語るか」が、私たちの現在の姿を左右しているのである。

【問題】

筆者の主張に最も合致するものを選べ。

  1. 記憶は、過去の出来事をそのまま保存している精神的なデータベースである。
  2. 人間の記憶は不正確なため、アイデンティティ形成には寄与しない。
  3. 記憶は他者の語りや語りたい自分像によって再構成される性質を持つ。
  4. アイデンティティとは、論理的に構成された記憶の再現である。
  5. 過去の出来事は、記憶を通して常に変わらず自分に影響を与える。
  6. 記憶の不確かさゆえに、人間の自己理解は根本的に不可能である。
  7. 記憶は自分が意識的に選び取るものではなく、完全に無意識の働きである。
  8. 過去の記憶は語られた瞬間に客観性を持つようになる。
  9. 記憶は他者との共有を通じて固定化される客観的事実である。
  10. 自分自身を語るとき、私たちは都合よく記憶を編集していることがある。
【正解と解説】

正解:3(と10)

選択肢を見抜くテクニック:

語句説明:
アイデンティティ:自分が「自分である」と感じる感覚。記憶や語りによって支えられている。

レベル:共通テスト対策(長文対応)|更新:2025-07-23|問題番号:020