評論文対策問題 019(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
「美しい」とされるものの基準は、私たちが思っているほど普遍的ではない。
ある社会で賞賛される容姿やデザインが、別の文化では評価されないことはよくある。
にもかかわらず、私たちはしばしば、美に対して絶対的な感覚を抱いてしまう。
その背景には、長い時間をかけて形成された文化的価値観や、教育・メディアを通して繰り返し刷り込まれる「美の型」がある。
そしてその「型」は、同時に「醜さ」の基準もつくり出してしまう。
本来、美と醜は相対的であり、環境や歴史的背景、さらには個人の経験によって柔軟に変わるはずのものである。
にもかかわらず、「これは醜い」「これは美しい」と断じてしまう感覚が、他者に対する無意識の排除や差別を生む温床となる。
美意識を持つこと自体は否定されるべきではないが、それが唯一絶対の基準であるかのように振る舞うことには、常に慎重さが求められる。
【問題】
筆者の主張として最も適切なものを選べ。
- 美とは、自然界に存在する普遍的な秩序の反映である。
- 文化によって美の基準が異なる以上、美を語ること自体が無意味である。
- 美しさに対する絶対的な感覚は、教育によって矯正すべきである。
- 美醜は客観的に定義可能なものであり、社会的に共有すべきだ。
- 美的価値にこだわることは、人間の自然な欲求であり、問題視する必要はない。
- 美と醜の基準は相対的であり、それらを絶対視する態度には注意が必要である。
- 美しいものを尊ぶのは自由だが、醜いものを排除するのは当然である。
- 個人の美的感覚は尊重されるべきだが、社会的な美の基準は統一すべきである。
- 美を語ることは感覚的すぎて学術的には無意味である。
- 美しさの基準が変化することは例外的であり、基本的には不変である。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 「普遍的ではない」と本文冒頭で否定されている。
- 選択肢2:× 「無意味」ではなく、「絶対視への警戒」が主張の焦点。
- 選択肢3:× 教育で矯正するという単一の価値押し付けは本文と逆。
- 選択肢4:× 「定義可能」「共有すべき」は本文と矛盾。
- 選択肢5:× 美意識の存在は否定しておらず、「こだわりすぎ」に警鐘を鳴らしている。
- 選択肢6:◎ 「相対的である」「絶対視に慎重」という本文の核心を反映。
- 選択肢7:× 醜さへの排除は「差別の温床」として問題視されている。
- 選択肢8:× 「統一すべき」は多様性を否定しており、本文と矛盾。
- 選択肢9:× 「無意味」とはしておらず、むしろその力を持つことへの注意を促している。
- 選択肢10:× 「変化するもの」と明記されており、固定観念を批判している。
選択肢を見抜くテクニック:
- 本文で繰り返し語られる「相対性」と「慎重さ」に注目
- 断定や排除・統一といった一元化する表現に注意
語句説明:
相対的:絶対的・普遍的ではなく、状況や文脈、人によって異なる性質を持つこと。