評論文対策問題 018(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
私たちはしばしば、「言葉にすること」が大切だと教えられてきた。
確かに、自分の気持ちや意見を伝えるためには言葉は不可欠であるし、沈黙は誤解を招くこともある。
しかし一方で、言葉にすることによって失われるものも存在する。
たとえば、ある感情を言葉にした瞬間に、その複雑さや揺らぎが単純化されてしまったように感じることがある。
また、相手が語るのを待つ沈黙や、共に黙って何かを見つめる時間は、言葉以上に濃密な意味を持つこともある。
沈黙は必ずしも「言わないこと」ではなく、「言わないと決めたこと」、つまり能動的な選択である場合もある。
そのとき沈黙は、受け身の拒否ではなく、相手に対する敬意や状況への繊細な配慮の表れとなる。
大切なのは、言葉と沈黙のどちらかを絶対化するのではなく、それぞれが持つ意味と力を状況に応じて使い分ける柔軟さである。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 沈黙は常に受け身の姿勢であり、言葉による表現の欠如である。
- すべての感情は、言葉にして初めて他者と共有できる。
- 沈黙は誤解の元であり、常に避けるべきである。
- 沈黙と発言のいずれか一方を選ぶことで、対話の効率が上がる。
- 言葉は感情の正確な再現を可能にする唯一の手段である。
- 沈黙にも積極的な意味があることを理解し、状況に応じて使い分けることが重要である。
- 言葉を選ばずに黙ることこそが、真の思いやりの表れである。
- 沈黙は意図せずに発生するものであり、制御はできない。
- 相手が沈黙しているときは、それが不誠実さを示すサインである。
- 言葉と沈黙のどちらにも意味があるが、現代では沈黙は価値を失っている。
【正解と解説】
正解:6
- 選択肢1:× 本文では「能動的な沈黙」が肯定的に語られている。
- 選択肢2:× 「すべての感情が言葉にできる」とは書かれておらず、むしろ単純化の危うさが指摘されている。
- 選択肢3:× 沈黙は避けるべきとはされておらず、意味ある行為として肯定されている。
- 選択肢4:× 「どちらか一方を絶対化しない」姿勢が本文の要点。
- 選択肢5:× 「唯一の手段」と断定する立場は本文のバランス感覚と合わない。
- 選択肢6:◎ 「積極的な沈黙」「状況に応じた使い分け」など、本文と完全に一致。
- 選択肢7:× 「思いやり=無言」とは本文にはない。文脈に合わない美化。
- 選択肢8:× 「能動的な選択」としての沈黙が本文のポイント。制御可能である。
- 選択肢9:× 沈黙=不誠実という短絡的判断は筆者の主張と逆行。
- 選択肢10:× 現代社会においても沈黙の価値は残っていると筆者は述べている。
選択肢を見抜くテクニック:
- 「どちらかを否定・絶対化」していない選択肢を探す
- 「積極的な沈黙」「状況に応じた使い分け」など中庸な視点がカギ
語句説明:
能動的沈黙:語らないことを自らの意志として選ぶ沈黙。相手への配慮や文脈への理解を前提にしている。