評論文対策問題 017(本文2倍・選択肢10個)

本文(抜粋)

インターネットの普及により、個人は匿名で発言する機会を得た。
それは本来、立場や権力に縛られずに自由に意見を言うための重要な手段だった。
実名では語れない本音や、少数派の声が可視化されることで、社会の多様性は確かに広がった。
しかし同時に、匿名であることが責任の所在を曖昧にし、攻撃的な言動や無自覚な差別を助長する場面も増えている。
誰でも意見を発信できるということは、裏を返せば、誰もがその言葉に責任を持つ必要があるということでもある。
問題は、「自由な発言」を理由に、他者への配慮や自省が免除されるような空気が、ネット空間に広がってしまっている点にある。
本来、自由とは、他者との関係の中で互いの尊厳を損なわないように行使されるべきものであり、その意味で匿名性は責任感の強化とセットで考えられるべきである。
発言者が名乗るかどうか以上に、語られる言葉に対する倫理的な自覚こそが、公共の対話を成立させる鍵なのである。

【問題】

筆者の主張に最も合致するものを選べ。

  1. 匿名性が保障されている限り、発言内容の責任は不要である。
  2. 自由な発言は、個人の気分や主観によって制限されるべきではない。
  3. 匿名性は社会の多様性を損なうため、全面的に禁止すべきである。
  4. 実名による発言こそが、責任ある言論の唯一の形である。
  5. ネットにおける発言は、匿名かどうかにかかわらず倫理的責任が問われる。
  6. 自由な発言とは、どんな言葉も制限なしに放ってよいということを意味する。
  7. 少数派の意見は、匿名で発信された場合、信頼性に欠ける。
  8. 匿名性を守るためには、すべての発言者が自己責任を回避する自由も持つべきである。
  9. ネット上の公共性には、発言の自由と倫理的自覚の両立が必要である。
  10. 匿名性はネット空間の本質であり、実名化の流れは社会の後退を意味する。
【正解と解説】

正解:9

選択肢を見抜くテクニック:

語句説明:
公共の対話:誰もが参加できる開かれた意見交換の場。相手の尊厳や文脈を尊重することが前提となる。

レベル:共通テスト対策(長文対応)|更新:2025-07-23|問題番号:017