評論文対策問題 016(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
「正しさ」はしばしば、誰にとっての正しさなのかが問われないまま使われる。
特に公共的な議論においては、誰かが語る「常識」や「正論」が、実は特定の集団の立場や利益を前提にしていることが多い。
それにもかかわらず、それが「誰にとっての正しさなのか」という視点が抜け落ちたまま議論が進行すると、反対意見が「わがまま」や「非合理」として排除されてしまう。
議論の健全性を保つためには、「異なる視点が存在すること」自体を前提にする態度が必要である。
また、「正しさ」の根拠を問わずに流通する言葉は、往々にして思考停止を招く。
「誰もがそう言っている」「前からそうなっている」という言葉の背後には、「なぜそうなのか」「それは今も妥当なのか」という問いが抜けていることが多い。
こうした問いを繰り返すことが、単に「正解」を出すこと以上に、社会の言葉を更新し、対話を可能にする力となる。
正しさとは、ひとつの固定された答えではなく、常に問い直されるべきプロセスである。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 正しさは、社会があらかじめ定めた規範に従うことで保証される。
- 誰にとっても通用する正論は、議論の土台として不可欠である。
- 異なる視点は、議論を混乱させるため排除されるべきである。
- 多数派の意見を優先することが、最も合理的な社会運営の方法である。
- 正しさとは、客観的に定義できる不変の真理である。
- 異なる視点の存在を前提に、正しさを問い直すことが重要である。
- 正論が多数の合意に基づいている限り、その妥当性は常に保証される。
- 「なぜそうなのか」という問いを重ねることが、思考停止を防ぐ鍵となる。
- 固定された正しさを維持することこそが、対話の前提である。
- 異論を排除してでも、全体の統一感を優先すべきである。
【正解と解説】
正解:6(と8)
- 選択肢1:× 「誰にとっての正しさか」が重要だと本文で強調されている。
- 選択肢2:× 「正論」自体が誰の正しさか不明確な場合が多いとされている。
- 選択肢3:× 「異なる視点の排除」は本文の最も批判する態度。
- 選択肢4:× 多数派意見の優先は、必ずしも正しさではないと示唆されている。
- 選択肢5:× 「固定された答えではなくプロセスである」と明記されている。
- 選択肢6:◎ 「異なる視点を前提」「問い直す」が本文の中核的論点。
- 選択肢7:× 多数意見が妥当とは限らず、再検討が必要とされている。
- 選択肢8:◎ 「問い直す姿勢」→「対話・更新」の核心に直結。
- 選択肢9:× 「固定された正しさ」は本文で否定されている。
- 選択肢10:× 異論を排除することは「健全な議論」を損なうとされている。
選択肢を見抜くテクニック:
- 多数派・常識・正論といった言葉が盲目的に肯定されていないか
- 問い続ける姿勢(「なぜそうなのか?」)を含む選択肢を探す
語句説明:
正論:一見理にかなっているように見える主張だが、誰の立場から見たかで意味が変わる可能性がある。