評論文対策問題 015(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
現代において「AI(人工知能)」は、単なる技術の枠を超え、社会や倫理の在り方に深く関わりつつある。
私たちはAIによって便利さを享受しているが、その背景には膨大な個人情報の収集や、意思決定の自動化がある。
とくに、雇用や医療、司法といった領域において、AIの判断が人間の判断を置き換える場面が増えている。
問題は、これらの判断が「透明性」を欠いたものである点にある。
つまり、なぜその判断が下されたのか、どのようなデータに基づいたのかが、利用者や市民には見えにくいという構造がある。
AIは本来、客観性や効率をもたらす手段であるはずだが、そのアルゴリズムが「どのような価値観を内包しているか」を問う視点がなければ、それは中立性を装った偏見の温床となる恐れすらある。
したがって、技術そのものの優劣以前に、それをどう社会に位置づけ、監視・制御するのかという「社会的想像力」が、いま私たちに問われている。
技術的進歩に無条件で期待をかけるだけでなく、そこに潜む構造的な力関係や価値判断の偏りを批判的に読み解く姿勢こそが、AIと共存する社会に必要な倫理である。
【問題】
筆者のAIに関する考えとして最も適切なものを選べ。
- AIは常に人間より客観的であり、すべての判断を任せるべきである。
- AIは単なる道具であり、社会的な意味や倫理的な問題とは無関係である。
- AIが導き出す結論には、価値観の偏りは一切存在しない。
- AIのアルゴリズムには、見えにくい価値判断が内在する可能性がある。
- AIの判断はブラックボックス化されておらず、常に透明である。
- AIは社会制度や倫理とは切り離して評価されるべきだ。
- AIの能力向上が続けば、人間の倫理的判断は不要になる。
- 技術は進歩しても、それを社会にどう位置づけるかが重要である。
- AIには道徳性をプログラムすれば、それだけで倫理的な問題は解決できる。
- AIを活用するには、その判断過程や社会的影響を批判的に見る姿勢が必要である。
【正解と解説】
正解:10
- 選択肢1:× 「常に客観的」とは限らず、偏見を内包する可能性が本文で指摘されている。
- 選択肢2:× 社会的・倫理的な位置づけの重要性が本文の主張の中心。
- 選択肢3:× 「価値観の偏り」をむしろ強調している。
- 選択肢4:△ 正解に近いが、「どう対処すべきか」が欠けている。
- 選択肢5:× 「透明性を欠いている」と本文で明言されている。
- 選択肢6:× 「切り離して評価」する姿勢を筆者は否定している。
- 選択肢7:× 人間の倫理判断の重要性がむしろ本文の主眼。
- 選択肢8:△ 正しいが抽象的で、「批判的に見る」というキーワードがない。
- 選択肢9:× 倫理的問題は単純なプログラミングで解決できないと示唆されている。
- 選択肢10:◎ 「判断過程」「社会的位置づけ」「批判的視点」のすべてが本文と一致。
選択肢を見抜くテクニック:
- 本文で強調されていたキーワード「透明性」「想像力」「倫理的視点」を含むか
- AIの中立性を無条件に信じている選択肢は要注意
- 「道具以上のもの」としてAIが扱われている文脈を踏まえる
語句説明:
社会的想像力:目に見えない構造や関係性、利害や倫理を意識し、制度や技術を多角的に見通す力。