評論文対策問題 012(本文2倍・選択肢10個)
本文(抜粋)
現代社会において「自由」は基本的人権として尊重されるべき価値である。
しかし、それが無制限に拡大されたとき、他者の自由や社会全体の秩序と衝突する場面が生じる。
たとえば、自らの表現の自由を主張する行為が、他者に対する差別や攻撃と結びつくとき、それは本当に「自由」と呼べるのかが問われる。
自由とは、孤立した個人が勝手気ままに振る舞うことではなく、他者との関係性や社会的文脈の中で成立する相互の尊重の上に成り立つ。
このような視点から、公共性という概念が改めて注目されている。
公共性とは、国家や行政が一方的に押し付けるものではなく、多様な立場の人々が相互に影響を与えながら形成する共有空間のことである。
公共性の担い手とは、決して「市民一般」という抽象的な存在ではなく、特定の声に押しつぶされないよう、沈黙してきた人々の声にも耳を傾けながら、対話を通じて「共に在ること」の可能性を模索する人々である。
自由と公共性はしばしば対立概念として語られるが、真の意味での自由は、公共性への意識の中でこそ鍛えられ、広がっていく。
【問題】
筆者の主張に最も合致するものを選べ。
- 自由とは、他人に干渉されない状態のことである。
- 公共性は、国家や行政が一貫して維持すべき秩序である。
- 表現の自由は、どのような内容であっても無制限に守られるべきである。
- 自由とは、他者や社会と無関係に個人が選ぶ選択である。
- 公共性は、社会全体の多数派の価値観に基づいて決まるべきである。
- 自由の実現には、他者との関係性や公共性を考慮することが不可欠である。
- 自由と公共性は本質的に両立しがたいものである。
- 公共性とは、市民が全員同じ考えを持つことによって成立する概念である。
- 公共性は、沈黙してきた声も含め、多様な対話によって形成される。
- 公共性の議論は特定の立場を持つ人々に委ねるべきである。
【正解と解説】
正解:9
- 選択肢1:× 本文は「勝手気ままな振る舞いではない」と明言。
- 選択肢2:× 国家による一方的な押し付けではないと否定されている。
- 選択肢3:× 無制限な自由が他者の尊厳を損なう懸念が示されている。
- 選択肢4:× 「孤立した個人」が否定されている。
- 選択肢5:× 多数派ではなく、「沈黙してきた人々の声」に言及している。
- 選択肢6:△ 正解にかなり近いが、「公共性の中で自由が鍛えられる」という後半の核心がない。
- 選択肢7:× 「しばしば対立とされるが、両立可能である」と述べられている。
- 選択肢8:× 「全員が同じ考えを持つこと」ではなく「対話と多様性」が重視されている。
- 選択肢9:◎ 「沈黙してきた人々」「対話によって形成」「共に在る可能性」など、本文の核心を反映。
- 選択肢10:× 「特定の立場」に任せるという一方的な構造は本文と逆行する。
選択肢を見抜くテクニック:
- 本文中の言い換え表現(共に在る・沈黙・対話)が選択肢に含まれているか
- 極端な断定や「○○すべき」「すべて~である」といった選択肢は疑う
- 正解の選択肢は本文の「前半と後半の接続ポイント(自由と公共性)」に立脚している
語句説明:
公共性:特定の個人や集団に偏らず、異なる立場の人々が共に関わることが可能な場や性質。単なる「公共施設」ではなく、社会的対話や配慮を含む概念。