古文対策問題 099(枕草子「春はあけぼの」長文)
【本文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。
秋は夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るもをかし。
かくて、四季それぞれの情趣、移りゆくものの美しさを思ひ知るなり。
【現代語訳】
春は夜明けがよい。だんだん白くなっていく山の端が、少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいているのが美しい。
夏は夜がよい。月のある頃はもちろん、暗い夜にも蛍が多く飛び交うのも趣がある。また、たった一つ二つ蛍がほのかに光りながら飛ぶのもおもしろい。
秋は夕暮れがよい。夕日が差して、山の端がとても近く感じられるとき、カラスがねぐらに帰るために三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐのも趣深い。
冬は早朝がよい。雪が降っているのは言うまでもなく、霜がとても白いのも、また言うまでもなく、とても寒い朝に火などを急いで起こして、炭を持って運ぶのもおもしろい。
このように、四季それぞれの情趣、移ろいゆくものの美しさを味わい知るのである。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言(せいしょうなごん)。平安中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』。四季・宮廷生活・自然の美などを感性豊かに記す随筆文学。
- 四季の情趣:自然や日常の移ろいの美しさを感じ取る感性。
重要古語・語句:
- あけぼの:夜明け、明け方。
- やうやう:だんだんと。
- 紫だちたる:紫がかった。
- をかし:趣がある、おもしろい。
- つとめて:早朝。
【設問】
【問1】「春はあけぼの」「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」という記述の主題として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 四季ごとの趣や美しさ
- 都の賑わい
- 武士の活躍
- 仏教の教え
- 恋の悩み
【問1 正解と解説】
正解:1
四季それぞれの情趣や美しさを感じることが主題である。
【問2】夏の情景で「月のころはさらなり」とは本文でどんな意味か、最も合うものを一つ選べ。
- 月のある夜がとても趣深いということ
- 夏の昼が好きだということ
- 朝に蛍が飛ぶということ
- 春に月がきれいだということ
- カラスが多いということ
【問2 正解と解説】
正解:1
「さらなり」は言うまでもなく、という意味。月のある夜は言うまでもなく趣深い。
【問3】秋の情景で「三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり」とは、どのような心情か。
- カラスがねぐらに帰る様子も趣深く感じている
- カラスが嫌いだと感じている
- 夕暮れが怖いと感じている
- 山に登りたいと思っている
- 冬が待ち遠しいと感じている
【問3 正解と解説】
正解:1
「飛び急ぐさへあはれなり」=カラスがねぐらに帰る様子も趣深い、という心情である。
【問4】『枕草子』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 四季や宮廷生活、自然の美を感性豊かに綴った随筆文学である
- 武士の活躍を描く軍記物語である
- 仏教説話中心の説話集である
- 農民の生活を記した日記文学である
- 恋愛歌物語である
【問4 正解と解説】
正解:1
『枕草子』は四季や宮廷生活、自然の美しさを鋭い感性で描いた随筆文学である。