古文対策問題 098(雨月物語「蛇性の婬」長文)
【本文】
越後の国にて、若き僧、村の娘と親しくなりけり。
ある夜、娘、僧のもとに忍びて来たり、深き情を交わす。
やがて僧、娘の正体に疑ひをいだき、祈りをこめてその身を見れば、娘、たちまち大蛇の姿となりて姿を消す。
後の夜、僧の夢に大蛇あらはれ、「あはれ、われ情に惑いし」と涙ながらに語りて消えぬ。
僧、深く因果をおそれ、仏道に精進せしという。
【現代語訳】
越後の国で、若い僧が村の娘と親しくなった。
ある夜、娘が僧のもとに忍んで訪れ、深い情を交わした。
やがて僧は娘の正体に疑いを抱き、祈りを込めてその身を見つめると、娘はたちまち大蛇の姿となって消えた。
後の夜、僧の夢に大蛇が現れ、「私は情に迷ったのです」と涙ながらに語って消えた。
僧は深く因果を恐れ、仏道に励むようになったという。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:上田秋成(うえだあきなり)。江戸後期の読本作家。
- 作品:『雨月物語』。怪異・奇談を中心とした短編集。
- 蛇性の婬:美女の正体が蛇であった怪談。
- 因果:仏教の善悪因果応報。
重要古語・語句:
- 忍ぶ:こっそり来る。
- 情:恋情、情愛。
- 祈りをこめて:強く祈る。
- あはれ:しみじみとした情感。
- 精進:仏道に励むこと。
【設問】
【問1】僧が娘の正体に気づいたきっかけとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 祈りをこめてその身を見つめたから
- 村人に教えられたから
- 自分で調べたから
- 旅をしていたから
- 夢で見たから
【問1 正解と解説】
正解:1
「祈りをこめてその身を見れば、娘、たちまち大蛇の姿となり」とある。
【問2】娘(大蛇)が僧の夢に現れて語ったこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 情に迷ったことを涙ながらに語った
- 都へ行きたいと言った
- 新しい住まいを告げた
- 僧に呪いをかけた
- 村を離れることを告げた
【問2 正解と解説】
正解:1
「われ情に惑いし」と涙ながらに語る。
【問3】この怪談を通じて僧が最終的に選んだ生き方として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 因果を恐れ仏道に励んだ
- 都に出世した
- 村を出て旅をした
- 僧をやめた
- 再び娘を探した
【問3 正解と解説】
正解:1
「僧、深く因果をおそれ、仏道に精進せしという」とある。
【問4】『雨月物語』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 怪異や奇談を描いた江戸時代の短編集である
- 恋愛歌物語である
- 武士の戦いを描く軍記物語である
- 農民の生活を描く日記文学である
- 仏教説話だけを集めた説話集である
【問4 正解と解説】
正解:1
『雨月物語』は怪異や奇談を描いた江戸時代の短編集である。