古文対策問題 097(今昔物語集「猿に恩返しされる話」長文)
【本文】
むかし、ある山寺に僧住みけり。
寺の近くに猿の親子ありて、僧を慕ひて来たり、僧もこれをあはれみて、日々餅など与へけり。
ある日、猿の子、深き谷に落ちて苦しみけるを、僧、命がけで救ひ上げたり。
そののち猿の親子、山の果実などを僧のもとに運び来たり、恩に報いける。
僧は猿の情け深さに心うたれ、ますます仏の道に励みけるという。
【現代語訳】
昔、ある山寺に僧が住んでいた。
寺の近くに猿の親子がいて、僧を慕って訪れ、僧もこれを哀れんで毎日餅などを与えていた。
ある日、猿の子が深い谷に落ちて苦しんでいるのを、僧が命がけで助け上げた。
その後、猿の親子は山の果実などを僧のもとに運んで恩に報いた。
僧は猿の情の深さに心を打たれ、ますます仏道修行に励んだという。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安末期〜鎌倉初期の説話集。
- 作品:『今昔物語集』。仏教説話・世俗説話・奇譚など幅広く収める。
- 恩返し:受けた恩に報いること。
- 仏道:仏教の教え・修行。
重要古語・語句:
- けり:過去の助動詞。
- あはれむ:哀れに思う。
- 救ふ:助ける。
- 報ゆ(むくゆ):報いる。
- ますます:いっそう。
【設問】
【問1】僧が猿の子を助けたときの様子として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 命がけで救い上げた
- 遠くから見ていた
- 誰かに任せた
- 見捨てた
- 逃げ出した
【問1 正解と解説】
正解:1
「僧、命がけで救ひ上げたり」と本文にある。
【問2】猿の親子が僧に対してとった行動として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 山の果実などを運んで恩に報いた
- 寺から離れた
- 夜に鳴き続けた
- 僧の家を壊した
- 都へ旅に出た
【問2 正解と解説】
正解:1
「山の果実などを僧のもとに運び来たり、恩に報いける」とある。
【問3】僧が猿の親子の行動から学んだこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 情け深さに心を打たれ仏道修行に励んだ
- 旅に出た
- 猿を都に連れて行った
- 新しい寺を建てた
- 村人と宴を開いた
【問3 正解と解説】
正解:1
「猿の情け深さに心うたれ、ますます仏の道に励みける」とある。
【問4】『今昔物語集』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 仏教説話や奇譚など多様な話を集めた大規模説話集である
- 武士の戦いの記録である
- 農民の生活を描いた日記文学である
- 恋愛歌物語である
- 都の四季を記す和歌集である
【問4 正解と解説】
正解:1
『今昔物語集』は仏教説話や世俗説話など多様な話を集めた説話集である。