古文対策問題 096(十訓抄「蓑を忘れた僧」長文)
【本文】
ある僧、旅の途にて、蓑を道に忘れたりけるを、はるかに行き過ぎて後、思ひ出でて嘆く。
「いかにして取りに帰らむ。道のほど遠く、ただ天に任せむ」と独りごつ。
そのとき、通りかかる村人あり。「僧よ、何をおもひ煩ふ」と問ふ。
僧、ことの次第を語るに、村人、「この里の者に頼みて届けしめむ」と言ふ。
僧、心安くなりて、村人の好意に深く感謝し、旅路を続けける。
【現代語訳】
ある僧が旅の途中で蓑(みの)を道に忘れてしまい、はるかに行き過ぎてから思い出して嘆いた。
「どうやって取りに戻ろうか。道のりが遠いので、ただ天に任せるしかない」とつぶやいた。
そのとき、通りがかった村人が「僧よ、何を思い悩んでいるのか」と尋ねた。
僧が事情を話すと、村人は「この里の者に頼んで届けさせよう」と言った。
僧は安心し、村人の親切に深く感謝して旅を続けた。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。鎌倉初期の説話集。
- 作品:『十訓抄』。教訓や説話を集めた説話集。
- 蓑:雨や雪を防ぐための、藁で作った外套。
重要古語・語句:
- 思ひ出づ:思い出す。
- 嘆く:嘆き悲しむ。
- 任す:任せる、委ねる。
- 心安し:安心だ、気楽だ。
- ける:過去の助動詞。
【設問】
【問1】僧が旅の途中で嘆いた理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 蓑を道に忘れてしまったから
- 道に迷ったから
- 食事に困ったから
- 友と別れたから
- 夜が明けてしまったから
【問1 正解と解説】
正解:1
「旅の途にて、蓑を道に忘れたりけるを…嘆く」とある。
【問2】僧が「ただ天に任せむ」と言った心情として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 自分の力ではどうにもならないので運命に任せようという気持ち
- 旅をやめようという決意
- 誰かに頼むつもりだったから
- 蓑を新しく買うつもりだったから
- 歌を詠む気分だったから
【問2 正解と解説】
正解:1
「道のほど遠く、ただ天に任せむ」とある。
【問3】村人が僧に対してとった行動として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 里の者に頼んで蓑を届けさせると言った
- 旅の供をした
- 蓑を新しく作った
- 僧に食事をふるまった
- 道案内をした
【問3 正解と解説】
正解:1
「この里の者に頼みて届けしめむ」と村人が言った。
【問4】『十訓抄』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 教訓や説話を集めた説話集である
- 恋愛歌物語である
- 武士の活躍を描く軍記物語である
- 仏教説話中心の説話集である
- 農民の生活を記す日記文学である
【問4 正解と解説】
正解:1
『十訓抄』は教訓や説話を集めた説話集である。