古文対策問題 095(蜻蛉日記「夫の留守」長文)
【本文】
夫、また長く留まりて帰らず。
春の夜、独り臥しつつ、行く末を思ひ煩ひけり。
「いかにして我をば思ひ出で給ふらむ。あやしくも、音信絶えて月日経ぬるかな」と嘆く。
庭の桜散り果てて、昔の約束も夢のごとくなりぬ。
手習ひの紙を引き寄せて、心のうちのうさを書きつくれば、涙、袖にとどまらず。
【現代語訳】
夫はまた長く家を留守にし、帰ってこなかった。
春の夜、独りで寝ながら、これから先のことを思い悩んだ。
「どうして私のことを思い出してくれているのだろう。不思議にも、便りが絶えて月日が過ぎてしまった」と嘆いた。
庭の桜も散り果て、昔の約束も夢のようになってしまった。
書き物の紙を引き寄せ、心の内のつらさを書きつけると、涙が袖にとどまらなかった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)。平安中期の女流日記文学作家。
- 作品:『蜻蛉日記』。自身の結婚生活や夫婦の心情を綴る。
- 音信:便り、連絡。
- うさ:つらさ、憂い。
重要古語・語句:
- 留まる:とどまる、家を離れる。
- 臥す:寝る。
- 思ひ煩ふ:思い悩む。
- あやし:不思議だ、変だ。
- 袖にとどまらず:涙がとめどなく流れる。
【設問】
【問1】筆者が春の夜に独りで臥しながら感じていたこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 将来への不安や夫への思い
- 旅への期待
- 新しい出会いの喜び
- 仕事への意欲
- 親子の絆
【問1 正解と解説】
正解:1
「行く末を思ひ煩ひけり」「我をば思ひ出で給ふらむ」とある。
【問2】筆者が夫について「嘆く」とある理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 便りが絶え、月日が過ぎてしまったから
- 夫が戦に出かけたから
- 家計が苦しかったから
- 子どもが泣いていたから
- 宴が終わったから
【問2 正解と解説】
正解:1
「音信絶えて月日経ぬるかな」とある。
【問3】筆者が涙を流したきっかけとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 心のうちのつらさを書きつけたから
- 喜びの手紙をもらったから
- 子どもと遊んだから
- 旅に出かけたから
- 宴を開いたから
【問3 正解と解説】
正解:1
「心のうちのうさを書きつくれば、涙、袖にとどまらず」とある。
【問4】『蜻蛉日記』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 女性の視点から夫婦の心情や人生を描く日記文学である
- 戦記文学である
- 仏教説話中心の説話集である
- 都の四季を描く和歌集である
- 農民の生活を記す日記文学である
【問4 正解と解説】
正解:1
『蜻蛉日記』は女性の視点から夫婦の心情や人生をつづる日記文学である。