古文対策問題 094(徒然草「つれづれなるままに」長文)
【本文】
つれづれなるままに、日暮らし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。
住み慣れたる所を出でて、別の所に移り住みたる人の心、いかばかりかは侘しからむ。
人の心は移ろいやすく、また、ものの哀れも知らぬうちに時は過ぎぬ。
それにしても、静かなる夕暮れに、昔のことども思ひ出でて、涙ぐむ折は、いとあはれなり。
世のうさを慰めむとて、ただ筆をとるほかになし。
【現代語訳】
何もすることがないままに、一日中硯に向かい、心に浮かぶ取りとめのないことを何となく書きつけると、なんとも奇妙で心が乱れるものである。
住み慣れた場所を出て別の場所に移り住んだ人の心は、どれほど寂しいことだろうか。
人の心は移りやすく、また、ものの哀れも知らないうちに時が過ぎていく。
それでも、静かな夕暮れに昔のことを思い出して涙ぐむときは、本当にしみじみと哀れである。
世の中の憂さを慰めようとして、ただ筆を取るほかに方法がない。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:吉田兼好(よしだけんこう)。鎌倉末期の随筆家。
- 作品:『徒然草』。随筆文学の傑作、兼好法師の日常と思索。
- 硯:墨をすって字を書く道具。
- ものの哀れ:しみじみとした感動・情趣。
重要古語・語句:
- つれづれなる:することがなく退屈な。
- よしなし事:取りとめのないこと。
- そこはかとなく:なんとなく。
- あはれ:しみじみとした情趣。
- うさ:憂い、つらさ。
【設問】
【問1】「つれづれなるままに」とは本文においてどのような意味か、最も合うものを一つ選べ。
- 退屈なままに、することもなく
- 急いで
- 楽しみながら
- 友と語らいながら
- 旅をしながら
【問1 正解と解説】
正解:1
「つれづれなる」は退屈な、することがない、という意味。
【問2】作者が筆をとる理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 世のうさを慰めるため
- 名声を得るため
- 友人に送るため
- 新しい知識を得るため
- 旅日記をつけるため
【問2 正解と解説】
正解:1
「世のうさを慰めむとて、ただ筆をとるほかになし」とある。
【問3】本文で「静かなる夕暮れに」筆者が感じていることとして最も合うものを一つ選べ。
- 昔のことを思い出して涙ぐむ
- 新しい計画を立てる
- 宴を開く
- 旅立ちを決意する
- 季節の移ろいを祝う
【問3 正解と解説】
正解:1
「昔のことども思ひ出でて、涙ぐむ折は、いとあはれなり」とある。
【問4】『徒然草』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 日常の思いや感慨を自在に綴った随筆文学である
- 仏教説話中心の説話集である
- 武士の活躍を描く軍記物語である
- 恋愛歌物語である
- 農民の生活を描く日記文学である
【問4 正解と解説】
正解:1
『徒然草』は日常の感慨を綴った随筆文学である。