古文対策問題 093(方丈記「無常観」長文)
【本文】
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人と栖と、またかくのごとし。
昔ありし家は、今はまれなり。住む人も、これに同じ。
朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水の泡のごとし。
知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。
【現代語訳】
流れていく川の水は絶えることがなく、しかももとの水ではない。
淀みに浮かぶ泡は、消えては生じて、長くとどまることがない。
この世に生きる人と住まいもまた同じである。
昔あった家は今ではまれであり、住む人も同じである。
朝に死に、夕方に生まれるのは、水の泡のようなものだ。
生まれ死んでいく人が、どこから来てどこへ行くのか、わからない。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:鴨長明(かものちょうめい)。鎌倉初期の随筆家。
- 作品:『方丈記』。無常観を主題とした随筆文学。
- 無常観:すべては移り変わり、とどまるものはないという考え。
- うたかた:水の泡。
重要古語・語句:
- ゆく河:流れる川。
- 絶えず:絶えることなく。
- ためし:例、前例。
- ならひ:習い、習慣、定め。
- いづかた:どこ、どちら。
【設問】
【問1】本文の「ゆく河の流れ」「うたかた」は何を象徴しているか、最も合うものを一つ選べ。
- 人生や世の無常
- 武士の強さ
- 自然の恵み
- 恋の喜び
- 都の繁栄
【問1 正解と解説】
正解:1
川の流れや泡は、人生や世の無常を象徴している。
【問2】「世の中にある人と栖と、またかくのごとし」の意味として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 人も住まいも移り変わりとどまらない
- 人はずっと同じ家に住む
- 住まいは立派な方が良い
- 人は朝に働き夜に休む
- 都は栄えている
【問2 正解と解説】
正解:1
人と住まいも無常である、という意味。
【問3】本文の無常観について最も合うものを一つ選べ。
- すべては移り変わりとどまることがないという思想
- 人は永遠に生きるという考え
- 戦いで勝つことの大切さ
- 自然の美しさだけを愛でること
- 都での栄華を誇ること
【問3 正解と解説】
正解:1
「無常観」とはすべてが移り変わるという考え方。
【問4】『方丈記』の特徴や意義として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 無常観を随筆文学で鋭く表現した点
- 戦記文学である点
- 農民の生活を記す点
- 宮廷生活を描いた点
- 恋愛歌物語である点
【問4 正解と解説】
正解:1
『方丈記』は無常観を随筆文学で鋭く表現した名作である。