古文対策問題 089(堀河百首和歌「春の夜」長文)
【本文】
春の夜、月の光さやかにさし出でて、うちとけたる軒の雫、ことに澄みわたりたるも、心澄みゆく折なり。
「春の夜の 夢のうき橋 とだえして 嵐にまがふ 雲の上かな」
物思ひに沈みて、昔語りをする人もあり。
香を焚き、琴の音を奏でつつ、心のおもむくままに和歌を詠みける。
さやけき光の中、袖を濡らす涙も、また春の哀れを覚ゆるものなり。
【現代語訳】
春の夜、月の光が明るく差し込み、軒からしたたる雫がひときわ澄みわたっていると、心まで澄んでいくような時である。
「春の夜の夢の浮き橋が途絶えて、嵐にまぎれる雲の上だなあ」という和歌である。
物思いに沈み、昔話をする人もいた。
香をたき、琴の音を奏でながら、心の赴くままに和歌を詠んだ。
さわやかな月の光の中で、袖を濡らす涙もまた春の哀れを感じさせるものであった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:堀河院百首歌は、院政期(平安末期)、堀河天皇の命により詠進された百首和歌の集。
- 和歌:五・七・五・七・七の短歌形式。季節や心情を詠む。
- うき橋:夢の中や現実と彼岸をつなぐ橋。転じて儚さの象徴。
- 雲の上:宮中、あるいは彼岸の象徴表現。
重要古語・語句:
- さやかに:はっきりと、明るく。
- うちとけたる:打ち解ける、和らいだ。
- 澄みわたる:澄み切る、澄み通る。
- 物思ひ:思い悩むこと。
- 哀れ:しみじみとした情趣や感動。
【設問】
【問1】本文の和歌「春の夜の夢のうき橋…」が象徴しているものとして最もふさわしいものを一つ選べ。
- 夢と現実のはかなさ
- 都の賑やかさ
- 戦いの激しさ
- 恋の成就
- 冬の厳しさ
【問1 正解と解説】
正解:1
「夢のうき橋」「雲の上」など儚さを詠んでいる。
【問2】春の夜の情景描写として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 月の光と軒の雫の澄んだ様子
- 雪の積もる庭
- 雷鳴とどろく夜
- 祭りの賑わい
- 田植えの風景
【問2 正解と解説】
正解:1
「月の光さやかにさし出でて、うちとけたる軒の雫、ことに澄みわたりたる」とある。
【問3】本文中、人々が春の夜にしていたこととして最も合うものを一つ選べ。
- 香をたき、琴を奏で、和歌を詠んだ
- 馬を走らせた
- 弓矢の稽古をした
- 商いの話をした
- 畑を耕した
【問3 正解と解説】
正解:1
「香を焚き、琴の音を奏でつつ、心のおもむくままに和歌を詠みける」とある。
【問4】堀河百首和歌集の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 院政期の和歌の流行と宮廷文化の反映を示す歌集
- 武士の戦いの記録である
- 仏教説話を集めたものである
- 農民の歌を集めたものである
- 物語文学である
【問4 正解と解説】
正解:1
院政期の宮廷文化・和歌の流行を伝えるのが特徴。