古文対策問題 085(源氏物語「夕顔」長文)
【本文】
ある夕暮れ、源氏の君、下町を行き給ふほどに、垣根に咲きたる夕顔の花のいと白きを見給ひて、車を寄せさせ給ふ。
宮の内より童女出で来たりて、花を折り取り、香のものとともに、君に奉る。
源氏の君、これを手にとりて、かの童女を召し寄せ、名を問ひ給ふ。童女、「これは夕顔と申す」と答ふ。
君、なほ興じ給ひて、童女のかたはらなる家に入り給ひ、さまざまの語らひをなして、やがてその家の女君と契り給ふ。
夕顔の花の縁より始まる、儚くも哀れなる恋の物語なり。
【現代語訳】
ある夕暮れ、源氏の君が下町を通っていたとき、垣根に咲いた白い夕顔の花を見て、車を寄せさせた。
屋敷の中から童女が出てきて、花を折り取り、香のものと一緒に君に差し出した。
源氏の君はそれを手に取り、童女を呼び寄せて花の名を尋ねると、「これは夕顔と申します」と答えた。
君は興味を持ち、その童女のいる家に入ってさまざまに語り合い、その家の女君と結ばれた。
夕顔の花をきっかけに始まる、はかなくも哀しい恋の物語である。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:紫式部。平安中期の女流作家。
- 作品:『源氏物語』。光源氏とさまざまな女性との恋と人生を描く長編物語。
- 夕顔:巻名にもなっている女性の名。花の名と重なる。
- 奉る:差し上げる、献上する。
重要古語・語句:
- いと:とても。
- 君:ここでは源氏の君。
- 語らふ:親しく語り合う。
- 契る:男女が結ばれる。
- 儚く:はかない、消えやすい。
【設問】
【問1】源氏の君が童女に尋ねたこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 花の名
- 童女の年齢
- 家の住所
- 香の種類
- 源氏の噂
【問1 正解と解説】
正解:1
「名を問ひ給ふ。童女、『これは夕顔と申す』と答ふ」とある。
【問2】夕顔の花が物語において象徴しているものとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- はかなく哀れな恋の始まり
- 家族の団欒
- 戦いの始まり
- 都のにぎわい
- 新しい季節の到来
【問2 正解と解説】
正解:1
夕顔の花は「儚くも哀れなる恋の物語」の象徴である。
【問3】源氏の君が童女のかたわらなる家に入った動機として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 興味を持ったから
- 童女に頼まれたから
- 誰かを探していたから
- 宴に招かれたから
- 病を治すため
【問3 正解と解説】
正解:1
「君、なほ興じ給ひて」とあり、源氏の君が興味を持って家に入った。
【問4】『源氏物語』の全体的な特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 王朝貴族社会の恋と人生を描く長編物語である
- 仏教説話中心の説話集である
- 武士の活躍を描く軍記物語である
- 農民の生活を記す日記文学である
- 説話や逸話を集めた短編集である
【問4 正解と解説】
正解:1
『源氏物語』は王朝貴族の恋や人生を繊細に描く長編物語である。