古文対策問題 083(枕草子「すさまじきもの」長文)
【本文】
すさまじきもの。昼ほゆる犬。春の網代。三、四月の紅梅の衣。牛死にたる牛飼。
何とも思はぬ人のもとに久しくゐたる。ひるの間、ただ一人臥したる。
よろづのことの、すさまじきは、いとつれなき世のならひなり。
それにしても、つれづれなる日々に、物のあはれも覚えず、ただ時の過ぎぬるをうしろめたく思ふこそ、いと口惜しけれ。
【現代語訳】
興ざめなもの。昼間吠える犬。春の網代(冬のものなのに)。三、四月の紅梅色の衣(季節外れ)。死んだ牛の牛飼い。
何とも思っていない人のもとに長居すること。昼間にただ一人で寝ていること。
世の中のいろいろな興ざめなことは、冷淡な世の習いである。
それでも、暇を持て余した日々には、物の哀れも感じられず、ただ時が過ぎていくことを残念に思うのは、本当に口惜しいことである。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』。四季や宮廷生活の感想を鋭く観察して綴る。
- すさまじき:興ざめな、しらける。
- 網代:冬の魚取り用具。春には不似合い。
重要古語・語句:
- すさまじき:興ざめな、つまらない。
- つれなき:冷淡な。
- つれづれなる:退屈な、手持ち無沙汰な。
- あはれ:しみじみとした情趣。
- 口惜しけれ:残念だ、もの足りない。
【設問】
【問1】「すさまじきもの」の例として本文に挙げられていないものを一つ選べ。
- 春の網代
- 昼間吠える犬
- 紅梅の衣
- 牛死にたる牛飼
- 夜明けの桜
【問1 正解と解説】
正解:5
「夜明けの桜」は本文に挙げられていない。
【問2】「すさまじき」とは本文においてどのような意味か、最も合うものを一つ選べ。
- 興ざめな、つまらない
- 華やかな
- 心躍る
- 美しい
- 勇ましい
【問2 正解と解説】
正解:1
「すさまじき」は「興ざめな、つまらない」の意味。
【問3】筆者がすさまじい日々に対して感じていることとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 時が過ぎることを残念に思っている
- 楽しさを感じている
- 新しい趣味を見つけている
- 宴を開いている
- 眠ることを好んでいる
【問3 正解と解説】
正解:1
「時の過ぎぬるをうしろめたく思ふこそ、いと口惜しけれ」と本文にある。
【問4】『枕草子』の美意識や感性として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 身近な日常の一コマにも趣や興ざめを見出し、観察する感性
- 武士の勇敢さを称賛する
- 恋愛や和歌だけを評価する
- 仏教的な無常観のみを語る
- 宮中行事だけを詳細に記す
【問4 正解と解説】
正解:1
身近な日常を鋭く観察する感性が枕草子の特徴である。