古文対策問題 080(宇治拾遺物語「袴垂の武勇」長文)
【本文】
袴垂という盗賊、都に名を知られたる強者なり。
ある夜、都の大路を歩みけるに、にわかに数人の武者、道を塞ぎて立ちはだかる。
袴垂、少しも騒がず、懐より刀を抜きて、「いざ、かかれ」と叫びて立ち向かふ。
武者ども、その勢いに気おされて、ついに一人も向かふ者なく、皆逃げ去りぬ。
袴垂、これを見て笑い、「武勇は数にあらず、心の持ちや」と言ひ残して立ち去りけるとかや。
【現代語訳】
袴垂という盗賊は、都に名の知れた強者であった。
ある夜、都の大通りを歩いていると、突然数人の武士が道をふさいで立ちふさがった。
袴垂は少しも騒がず、懐から刀を抜いて「さあ、かかってこい」と叫び、立ち向かった。
武士たちはその勢いに気圧され、ついに一人も向かう者がなく、みな逃げ去った。
袴垂はこれを見て笑い、「武勇は数ではない、心の持ちようだ」と言い残して立ち去ったという。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。鎌倉時代の説話集。
- 作品:『宇治拾遺物語』。民間の逸話や教訓を集めた短編集。
- 袴垂:伝説の盗賊・強者。
- 武者:武士。
重要古語・語句:
- にわかに:突然。
- 立ちはだかる:行く手をふさぐ。
- かかれ:かかってこい。
- 気おされる:気圧される、威圧されて尻込みする。
- 数にあらず:人数ではない、数ではない。
【設問】
【問1】袴垂が武者たちに向かって叫んだ言葉として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 「いざ、かかれ」
- 「すぐに帰れ」
- 「助けてくれ」
- 「道をあけよ」
- 「戦は好まぬ」
【問1 正解と解説】
正解:1
「いざ、かかれ」と叫びて立ち向かふ」と本文にある。
【問2】袴垂が武者たちに勝利した理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- その心の強さ・気迫による
- 武器が特別だったから
- 仲間が助けに来たから
- 武者たちが病気だったから
- 道に迷って逃げたから
【問2 正解と解説】
正解:1
「その勢いに気おされて、ついに一人も向かふ者なく」と本文にある。
【問3】袴垂が立ち去り際に言い残した言葉の主旨として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 武勇とは人数ではなく心のあり方だ
- 盗賊は強い
- 都は危険だ
- 刀が一番大事だ
- 夜は眠るべきだ
【問3 正解と解説】
正解:1
「武勇は数にあらず、心の持ちや」と言い残したことからも明らか。
【問4】『宇治拾遺物語』の全体的な特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 民間説話や教訓的な逸話を集めた説話集である
- 歌物語である
- 恋愛小説である
- 歴史物語である
- 日記文学である
【問4 正解と解説】
正解:1
『宇治拾遺物語』は民間説話や教訓的な逸話を集めた説話集である。