古文対策問題 079(大和物語「姨捨山の老母」長文)
【本文】
いにしへのことなれど、ある国に老母を持つ男ありけり。
その国の掟により、年老いた親を山に捨てねばならず、男、涙ながらに母を姨捨山に連れゆきけり。
山の中ほどにて、母、「これを持ちて行きなされ」と、道すがら枝を折りて道しるべとしぬ。
男は母の知恵深きを思ひ、ふたたび母を家へ連れ帰り、かくまいぬ。
後に国主、難題を出したりければ、男、母の教えによりてこれを解き、国主、老母の知恵をほめ、ついにこの掟を改めさせたりける。
【現代語訳】
昔のことだが、ある国に年老いた母を持つ男がいた。
その国の決まりで、年老いた親を山に捨てなければならず、男は涙を流しながら母を姨捨山に連れて行った。
山の途中で、母は「これを持って行きなさい」と言って、道すがら枝を折って道しるべとした。
男は母の知恵深さを思い、再び母を家に連れ帰ってかくまった。
その後、国主が難題を出したとき、男は母の教えによってこれを解き、国主は老母の知恵をほめ、ついにこの決まりを改めさせた。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安前期の短編物語。
- 作品:『大和物語』。和歌と説話が融合した短編集。
- 姨捨山:親を山に捨てるという伝承の地。
- 国主:その地の支配者、領主。
重要古語・語句:
- いにしへ:昔。
- 掟:決まり、法律。
- かくまふ:かくまう、隠して守る。
- 難題:難しい問題。
- 知恵深し:知恵がある、賢い。
【設問】
【問1】男が母を山に捨てることになった理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 国の掟で年老いた親を山に捨てる決まりがあったから
- 家が狭くなったから
- 母が旅に出たかったから
- 母が重い病になったから
- 国主の命令で仕方なく
【問1 正解と解説】
正解:1
「国の掟により、年老いた親を山に捨てねばならず」と本文にある。
【問2】男が母を家に連れ帰ったきっかけとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 母の知恵深さを思い知ったから
- 母が泣き叫んだから
- 家族に勧められたから
- 都から命令が出たから
- 母が病気になったから
【問2 正解と解説】
正解:1
「母の知恵深きを思ひ、ふたたび母を家へ連れ帰り」と本文に明記されている。
【問3】後に男が国主の難題を解くことができた理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 母の知恵によって
- 自分の力だけで
- 友人の助けで
- 本を読んで
- 旅をした経験から
【問3 正解と解説】
正解:1
「母の教えによりてこれを解き」と本文にある。
【問4】この物語の主題として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 年老いた者の知恵や親孝行の大切さ
- 旅の危険
- 戦いの勇敢さ
- 恋愛の楽しさ
- 都の生活
【問4 正解と解説】
正解:1
老母の知恵や親孝行の大切さが物語の中心主題である。