古文対策問題 078(今昔物語集「安倍晴明の狐」長文)
【本文】
これは今は昔、安倍晴明という陰陽師ありけり。
ある時、晴明がまだ童なるころ、母は狐なりという噂あり。
童の晴明、村の子どもたちと遊びけるに、不思議なること多かりき。
ある日、村の子の一人が池に落ちて溺れしかば、晴明、ただ一言呪を唱えたるに、水の流れひとりでに分かれて、子は助かりぬ。
村人ども、晴明の母の正体を問うに、母、ついに狐の姿となりて、山に去りにけり。
晴明、涙しつつも、「これもまた定めなき世のならひなり」と、陰陽道の道に志す。
【現代語訳】
これは今は昔、安倍晴明という陰陽師がいた。
あるとき、晴明がまだ子どもだったころ、母が狐だという噂があった。
子どもの晴明が村の子どもたちと遊ぶと、しばしば不思議なことが起こった。
ある日、村の子が池に落ちて溺れたとき、晴明が呪文を唱えると、水の流れが自然に分かれて子は助かった。
村人が晴明の母の正体を問いただすと、母はついに狐の姿になって山に去った。
晴明は涙しながらも「これもまた定めなき世の習いだ」として陰陽道の道を志した。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:未詳。平安末期~鎌倉初期の説話集。
- 作品:『今昔物語集』。仏教説話・世俗説話が収められている。
- 安倍晴明:実在の陰陽師。数々の伝説が残る。
- 狐:妖怪・変化の象徴。
- 陰陽道:古代日本の占術・呪術・天文学。
重要古語・語句:
- 童:子ども、少年。
- 呪:呪文。
- ならひ:習い、定め、運命。
- いにけり:~してしまった。
【設問】
【問1】安倍晴明の母の正体について本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 狐だった
- 姫君だった
- 村人だった
- 僧侶だった
- 都の役人だった
【問1 正解と解説】
正解:1
「母、ついに狐の姿となりて、山に去りにけり」とある。
【問2】童の晴明が村の子どもを助けた方法として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 呪文を唱えた
- 船をこいだ
- 泳いで助けた
- 綱を投げた
- 大声で呼びかけた
【問2 正解と解説】
正解:1
「呪を唱えたるに、水の流れひとりでに分かれて」と明記されている。
【問3】母が去った後、晴明が決意したこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 陰陽道を志すこと
- 都に戻ること
- 母を探しに山に入ること
- 村を出ること
- 父と暮らすこと
【問3 正解と解説】
正解:1
「陰陽道の道に志す」と本文にある。
【問4】『今昔物語集』の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 仏教説話や世俗説話、怪異談を含む説話集
- 日記文学
- 歴史物語
- 歌物語
- 恋愛物語
【問4 正解と解説】
正解:1
『今昔物語集』は仏教説話や世俗説話、怪異談など多様な話が収められている。