古文対策問題 070(枕草子「春はあけぼの」長文)
【本文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。
秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさまいとをかし。
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るもいとつきづきし。
四季のさまざまなるけしき、言葉に尽くしがたくをかしきものなり。
【現代語訳】
春は夜明けが美しい。だんだん白んでいく山の端が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている。
夏は夜。月が出ているころは言うまでもなく、暗い夜でも蛍がたくさん飛び交うのがよい。
秋は夕暮れ。夕日が差して山の端がとても近くなったとき、カラスが寝床へ帰るのに三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐ様子がとても趣深い。
冬は早朝。雪が降ったときは言うまでもなく、霜が真っ白な朝も、また特に寒い朝に火を急いでおこして炭を運ぶのも、とても季節にふさわしい。
四季それぞれの様子は、言葉では尽くせないほど趣があるものだ。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:清少納言。平安中期の女流随筆家。
- 作品:『枕草子』。四季や宮中の暮らしを鋭く描写。
- あけぼの:夜明け、明け方。
- つとめて:早朝。
重要古語・語句:
- やうやう:しだいに、だんだん。
- たなびく:雲や煙が細く長く横に流れる。
- さらなり:言うまでもない。
- つきづきし:似つかわしい、ふさわしい。
- いとをかし:とても趣深い。
【設問】
【問1】春の「あけぼの」の情景として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 白んでいく山ぎわと紫がかった雲が細くたなびく様子
- 桜が満開の昼間の様子
- 夕日が沈む山の景色
- 雨の夜の様子
- 霜が降りた朝の庭
【問1 正解と解説】
正解:1
「やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」とある。
【問2】夏の夜の趣深さとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 蛍がたくさん飛び交う様子
- 雪が降る様子
- 夕焼けが美しいこと
- カラスが鳴く様子
- 草の露が光ること
【問2 正解と解説】
正解:1
「蛍の多く飛びちがひたる」と本文に明記されている。
【問3】秋の夕暮れの趣深さとして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- カラスが寝床へ帰るために飛ぶ様子
- 梅の花が咲く様子
- 月が昇る様子
- 川の水が光ること
- 夜明けの山ぎわ
【問3 正解と解説】
正解:1
「烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさまいとをかし」と描かれている。
【問4】『枕草子』「春はあけぼの」の段の最大の特徴として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 四季の美しさを簡潔な言葉と感性で描き出す
- 政治的事件の記録である
- 恋愛の駆け引きを描く
- 宗教的説話を語る
- 歌物語として詠まれる
【問4 正解と解説】
正解:1
「四季のさまざまなるけしき、言葉に尽くしがたくをかしきものなり」とあり、感性と簡潔な言葉で四季の美しさを描いている。