古文対策問題 069(更級日記「物語への憧れ」長文)
【本文】
少女のころより、物語のことをのみ心にかけて、夜昼、夢にまで見ゆるほどなりき。
田舎にありて、都の人の語る「源氏物語」や「うつほ物語」など、いまだ読まず聞かずの巻多くて、恋しきこと限りなし。
いとど物語を読みたくて、「上京したならば、すべての巻を得て、夜を日に継ぎて読み明かさん」と願ひける。
ある日、母の許しを得て、はじめて「源氏物語」を手に取り、夢にまで見し紫の上の物語を読み始む。
そのうれしさ、言ふばかりなく、心の底より物語の世界にひたる思ひなりき。
【現代語訳】
少女のころから、物語のことばかり心にかけ、昼も夜も夢にまで見ていた。
田舎に住んでいて、都の人が語る「源氏物語」や「うつほ物語」など、まだ読んだことも聞いたこともない巻が多く、とても恋しく思っていた。
ますます物語が読みたくて、「都に上ったなら、すべての巻を手に入れて、夜を徹して読み明かしたい」と願っていた。
ある日、母の許しを得て、初めて「源氏物語」を手に取り、夢にまで見た紫の上の物語を読み始めた。
その嬉しさは言葉では言い表せないほどで、心の底から物語の世界にひたる思いだった。
【覚えておきたい知識】
文学史・古文常識:
- 作者:菅原孝標女。平安中期の女流日記文学作家。
- 作品:『更級日記』。少女期からの物語への憧れと成長を綴る。
- 源氏物語:紫式部作の物語文学。平安貴族の恋や人生を描く。
- 紫の上:源氏物語の重要な女性登場人物。
重要古語・語句:
- 恋しきこと限りなし:恋しくてたまらない。
- いとど:ますます。
- 得て:手に入れて。
- 夜を日に継ぎて:昼夜を問わず。
- ひたる:没頭する、ひたす。
【設問】
【問1】筆者が「物語」を夢にまで見た理由として本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 物語への憧れと強い興味があったから
- 物語を書かされていたから
- 母の命令で読んでいたから
- 物語が苦手だったから
- 物語を都で習ったから
【問1 正解と解説】
正解:1
「物語のことをのみ心にかけて、夜昼、夢にまで見ゆるほど」と明記されている。
【問2】筆者が田舎に住んでいて最も恋しく思ったこととして本文内容に最も合うものを一つ選べ。
- 「源氏物語」などの都の物語を読めなかったこと
- 都の人々と会えなかったこと
- 寺社に参拝できなかったこと
- 山や川で遊べなかったこと
- 都の祭りに参加できなかったこと
【問2 正解と解説】
正解:1
「いまだ読まず聞かずの巻多くて、恋しきこと限りなし」と本文にある。
【問3】「源氏物語」を初めて手にした時の筆者の感情として本文内容に最も近いものを一つ選べ。
- 言葉では言い表せないほどの喜び
- 恐れと不安
- がっかりした
- 特に何も感じなかった
- 友人と争った
【問3 正解と解説】
正解:1
「そのうれしさ、言ふばかりなく」と明記されている。
【問4】この一節が象徴する『更級日記』の主題として最もふさわしいものを一つ選べ。
- 物語への憧れと少女の心の成長
- 戦乱の悲しみ
- 都の政争
- 宗教的な修行
- 家族の争い
【問4 正解と解説】
正解:1
『更級日記』の大きな主題は「物語への憧れと少女の成長の記録」である。